技術士は転職に有利って本当?資格の取得方法と転職先を徹底調査

モノづくりに携わる人にとって最高峰の資格と言われる技術士。機械や建築、農業、水産など21の部門に関する高度な知識と応用能力、さらには技術者倫理を兼ねそろえていると判断された技術者に与えられる資格です。

難度の高い技術士の資格を取得していると、転職は有利になるものでしょうか。技術士の転職先についても気になるところです。今回は技術士の概要から転職事情まで説明します。技術士の資格を転職活動に活かしたいと考えている方や、これから取得しようと考えている方はぜひ参考にしてください。

技術士の資格とは

技術士は、文部科学省が認定する21の技術部門に関する業務を行える国家資格です。試験では高度な科学的知識や高い技術倫理が問われ、科学技術の業界においては最も権威が高いとされています。

技術士の試験は一次試験と二次試験に分かれていて、それぞれ年に1回の開催となっています。技術士に関連する21の部門とそれぞれの部門に関連する業務の例は、下表の通りです。

部門 業務例
1.機械部門 機械設計・工場設計
2.船舶・海洋部門 船舶の設計・建造
3.航空・宇宙部門 ロケット・航空機の開発
4.電気電子部門 情報通信ネットワークの開発
5.化学部門 セラミックス・合成樹脂などの分析や開発
6.繊維部門 衣料や繊維の開発
7.金属部門 金属材料の生産システム開発
8.資源工学部門 金属鉱物の探査
9.建設部門 国土計画・都市計画
10.上下水道部門 上下水道計画
11.衛生工学部門 水質分析・測定
12.農業部門 食物の栽培・品種改良
13.森林部門 森林保全・管理
14.水産部門 水産物物流システム開発
15.経営工学部門 生産計画の物流マネジメント
16.情報工学部門 ソフトウェアの設計
17.応用理学部門 化学分析・土木地質調査
18.生物工学部門 環境微生物の調査
19.環境部門 環境測定計画・分析
20.原子力・放射線部門 原子炉システムの設計
21.総合技術監理部門

大学では、在学生の技術者育成のために技術士第一次試験の受験をサポートする取り組みが見られるようになりました。その結果、技術士第一次試験の合格者を占める在学生の割合は年々増加傾向にあります。

公益社団法人日本技術士会が公表しているデータによると、在学生の割合は2013年で約10%であるのに対し2018年には約20%と、2倍に増加しています。

技術士一次試験合格者

画像引用:公益社団法人日本技術士会

一次試験は誰でも受験可能

一次試験の受験資格は制限がないため、実務経験がない人でも受験できます。一次試験の合格率は受験年度によってさまざまですが、平成28年から令和2年までの直近5年間の平均は46.1%。この合格率は2人にひとりが合格する割合で、試験の難易度はそこまで高くないと言えます。

しかし出題範囲が広いため、参考書や過去問などでしっかり勉強をしてから試験に臨む必要があります。

二次試験には4~7年の実務経験が必須

二次試験を受験するためには、一次試験への合格と4~7年の実務試験が必要です。受験に必要となる実務経験の年数の違いについては以下の通りです。

  1. 技術士の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
  2. 職務上の監督者の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験
  3. 指導者や監督者の有無・要件を問わず、7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間の実務経験。

指導者や監督者の要件、従事する業務の部門に応じて、必要となる実務経験の年数は異なります。

二次試験の合格率は、平成30年から令和2年までの直近3年間で平均10.9%です。約半分が合格する一次試験と比較して、二次試験では10人にひとりしか合格しない計算になります。合格率が低い背景にあるのは、出題範囲の広さと、実務をこなしながら勉強をしなければならない受験者の実情です。

二次試験では、技術的な知識に加えて、応用能力や問題解決能力が問われ、筆記試験だけではなく口頭試験も課されます。

このように一次試験と比較して対策することが多い一方で、受験者の多くは仕事の影響で思い通りに勉強時間を確保できない点が合格率の低さにつながっていると考えられます。

参照:公益社団法人日本技術士会

技術士・技術士補いずれも登録が必要

技術士の試験を合格しても、直ちに「技術士」あるいは「技術士補」と名乗れるわけではありません。

試験に合格後、公益社団法人日本技術士会に登録の申請をして、登録簿に必要な事項についての登録を受ける必要があります。

登録を受けてはじめて、一次試験のみ合格した人は「技術士補」、二次試験まで合格した人は「技術士」という名称を使用できるようになります。

参照:公益社団法人日本技術士会

技術士・技術士補は転職に有利か

技術士・技術士補となることで、転職をどの程度有利に進められるのでしょうか。転職活動において技術士が有利になる場面や、技術士としての独占業務の有無についてみていきます。

技術士補でも基本レベルの知識・技術をアピールできる

技術士補の登録があると、科学技術全般に関する基礎知識だけではなく、特定の分野に関する専門知識の保有をアピールできます。

また、試験で選択した分野が転職先に関連する場合、仕事への熱意や勉強意欲のアピールにつながるはずです。その結果、他の転職希望者と差をつけられて、転職活動を有利に進められると期待できます。

技術士であれば知識と実務経験をアピールできる

技術士の資格では、高度な知識や実務経験があることをアピールできます。

また、試験では技術者の倫理観も問われるため、信頼できる人柄という評価を受けられる可能性もあります。企業にとっては、技術士を雇うことで企業の信頼度向上につながるメリット

があるため、採用において技術士資格が有利に働くはずです。

技術士にしかできない独占業務はない

電気工事士や建築士と異なり、技術士にしかできない独占業務は存在しません。技術士はあくまで、高度な知識や問題解決能力が備わっているコンサルタントとしての称号に留まります。そのため、技術士は強いアピールにつながるものの、転職先の業務によっては必ずしも有利になるとは限りません。

また、試験で選択した分野が転職先と関連していない場合、転職活動でのアピールができないこともあります。技術士・技術士補を転職活動で活かすためには、転職先に関わる分野を選択して受験するのがおすすめです。

技術士の主な転職先

技術士には独占業務がないため、技術士としての勤務先・転職先は多岐にわたります。ここでは、技術士の主な勤務先を確認しつつ、その背景に潜む理由を探っていきます。

一般企業への就職がトップ

技術士登録者の勤務先

画像引用:公益社団法人日本技術士会

公益社団法人日本技術士会が公表した2019年時点のデータによると、技術士登録者の勤務先は一般企業が42.7%でトップです。技術士は、高度な知識や倫理観を兼ね備えたコンサルタントであるため、一般企業においては技術コンサルタントとしての業務を期待されます。

具体的には、生産・品質管理の技術改善コンサルタントや、 設備管理・安全設計・現場改善の助言を行うといった業務が挙げられます。

建設業界

技術士の主な就職先のひとつに、建設業が挙げられます。建設工事の入札においては、技術士の在籍が参加条件となったり、企業の評価を高めて受注件数を増やしたりといった理由で、技術士が重宝されやすい風潮です。

そのため、建設業への転職には技術士・技術士補が有利に働く可能性が高いと言えます。

コンサル業界

公益社団法人日本技術士会のデータでは、一般企業に次いで多い勤務先が35.8%の建設コンサルタントです。建設コンサルタント業務においては、さまざまな観点から科学的な調査を行って、クライアントの抱える課題の解決法を提案することが求められます。

技術士の試験で培った課題解決能力は、実際のコンサルタント業務で活かせると期待されるため、建設コンサルタント業界においても技術士のニーズは高いと考えられます。

インフラ業界

技術士の分野には、水道や電気などインフラに関連するものが多数存在します。インフラ業界では、技術士の試験で身に付けた幅広い知識や高い技術倫理観を活用して仕事をできる点が強みです。

メーカーのエンジニア

ソフトウェアや情報通信ネットワークの開発も、技術士の試験分野に関連します。メーカーのエンジニアでは、こういった分野に関連する業務を行うことが多いため、技術士資格が役立ちます。

技術士・技術士補が転職に成功するには

技術士・技術士補を転職の成功につなげるためには、採用試験でのアピールや試験分野の選択といった取り組みが重要です。それでは、技術士・技術士補の資格を転職で活かすために気をつけるべきポイントを見ていきます。

技術士補でも書類や面接でアピールする

技術士補は実務経験が伴わないため、採用でアピールしにくいと考えることもあるかもしれません。しかし、技術士補の保有で勉強意欲や熱意が伝わることもあるため、書類や面接では技術士補に関するアピールをしっかり盛り込んでください。

技術士補の保有をアピールすることで、同じように転職先の業界が未経験のライバルに対して差を付けられるはずです。

業務における資格の活かし方を伝える

技術士は独占業務ではないため、業務での資格の活かし方は企業によってさまざまです。そのため、専門知識や技術を備えた技術士の資格をいかに応募企業で活かせるのか、転職活動時にしっかりアピールできれば、採用率が高まります。

また、技術士の難度を理解していない企業や人事担当者も多いため、面接では試験の難度や勉強にかけた時間も伝えるようにしてください。

技術士の部門関連の業種にターゲットを絞る

技術士で選択した分野に関連する業種であれば、資格の保有を強くアピールしやすいものです。そのため、転職先は技術士の部門に関連するところを選ぶようにしてください。

もしくは、転職先に関連する分野を受験して、勉強意欲をアピールするのがおすすめです。

技術士向けの求人が多い転職エージェントを利用する

転職活動を成功させるには、自分の強みを最大限発揮できる求人を探すことが重要です。技術士を転職活動に活かしたい場合は、技術士向けの求人が豊富な転職エージェントを利用してください。

求人数が多ければ多いほど、自分の希望する条件の求人に出会える可能性は高まります。

 

技術士・技術士補の転職にはヒューレックスがおすすめ!

さまざまな業界で重宝される技術士、また技術士補は、転職活動においても有利になりえます。しかし、技術士の知名度自体はさほど高くなく、企業によってはアピールとして弱いことも。

有資格者や勉強中の方は、技術士・技術士補であることを評価してくれそうな企業を探してみることをおすすめします。全国の地方銀行と提携していて、企業情報に詳しいヒューレックスでは、技術士・技術士補向けの求人を多数取り扱っています。

また、書類審査や面接での技術士のアピールポイントをアドバイスしているため、転職活動を有利に進められる可能性大です。

技術士の資格を転職に活かしたい、技術士の資格取得を検討しているという方は、ぜひ一度ご相談ください。無料相談

サービス詳細を見る  

この記事の監修

須賀川 敏哉

神奈川県出身。早稲田大学卒業後、大手証券会社に入社。人材業界では、通算20年以上のキャリア。10年間の証券営業を通じ、経済や景気動向、企業動向の見方を養う。 大手総合人材サービス会社では、首都圏拠点立ち上げ、新宿・丸の内支店長、金融・外資部長、東京本社エリアディレクターを歴任。 ヒューレックスでは、転職支援を中心に、コンサルタントとして幅広い職種と年齢層に対応。

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