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転職で年収が下がる理由
2020年12月に厚生労働省が発表した「雇用統計調査」によると、2020年の転職入職者(転職者)のうち、賃金が1割以上増加した人は22.7%、1割以上減少した人は27.6%、増減額が1割未満だった人は47.7%となっています。このことから、1割以上減少した人の方が増加した人よりも4.9%多かったことが明らかになりました。また、特に高齢になるほど減少した割合が増加しており、逆に30~44歳の年代は27.7%の人が増加したのに対し、減少した人の割合は20.8%と全体の傾向とは逆転していることが分かります。
■転職入職者の年齢階級別賃金変動状況(令和元年)
年齢 | 増減幅 | 全体割合(%) |
---|---|---|
合計 | 1割以上増加 | 22.7 |
1割以上減少 | 27.6 | |
19歳以下 | 1割以上増加 | 31.7 |
1割以上減少 | 13.8 | |
20~29歳 | 1割以上増加 | 31.7 |
1割以上減少 | 13.8 | |
30~44歳 | 1割以上増加 | 27.7 |
1割以上減少 | 20.8 | |
45~59歳 | 1割以上増加 | 20.7 |
1割以上減少 | 26.3 | |
60歳以上 | 1割以上増加 | 6.3 |
1割以上減少 | 57.7 |
参考:政府統計の総合窓口「雇用動向調査/年次別推移」
この調査から、現在の転職市場は年収が下がる人の方が上がる人よりも多い状況と言えるでしょう。それではなぜ、転職することで年収が下がってしまうのでしょうか。その代表的な5つの理由を紹介します。
未経験、異業種に転職する
年収は企業にとって必要な「専門スキル」や「経験」があるほど、上がりやすくなります。キャリアチェンジして未経験や異業種に転職する場合、同業種・職種への転職と比べると活かせるスキルや経験は少なくなりがちです。そのため、年収が下がる可能性が高まるのです。
役職やポジションが下がる
転職先で役職やポジションが前職よりも下がってしまうと、手当などの関係で年収が低くなってしまう可能性があります。また、同じ役職名であっても、責任の範囲やマネジメントする人数、管理業務といった具体的な業務と手当の内容は企業によって異なるので、年収が下がることがあります。
転職先の企業からの評価が低い
同業の会社に転職したとしても、所持しているスキルや経験の評価が前職よりも低い場合、年収が低くなるリスクが高まります。
面接時に適切な交渉をしない
面接時に前職の年収や希望年収について、適切な交渉をしなかった場合、転職先での年収が下がってしまう可能性が高まります。例えば、「年収が下がってもいいから転職したい」という考えから実際の年収よりも低く申告するときは、場当たり的ではなく、しっかりと他の条件等とバランスを考慮したうえで伝える必要があるでしょう。
賞与・諸手当の確認不足
賞与や諸手当の金額が前職よりも少なかったり、そもそも存在しないことが理由で年収が下がってしまうこともあります。直近の賞与の支給額の確認なども行っておいて損はありません。
転職前に年収低下の「許容範囲」を設定することが成功のコツ
転職で年収が下がってしまっても、一概に「転職失敗」というわけでありません。むしろ年収が下がっても、労働環境が改善されたり、やりたいことを仕事にできたりすることで、前職よりもイキイキと働けているケースはたくさんあります。そのためにはまず、年収以外の希望条件の洗い出して、それらの条件と年収を比較しましょう。そして年収を下げられるの「許容範囲」 を設定することが大切です。
「100万円以上下げられる」人は過半数以上
en転職が転職による収入ダウンについて2,110人にアンケートを実施した結果、20代の78%が100万円未満という結果であり、30代以上のミドル層は「100万円以上下げてもよい」と答えた人が61%でした。元々の収入の違いはあるものの、20代の過半数は50万円未満と回答していることから、年齢が上がるにつれて下げられる年収の許容範囲の限度が上がる傾向があります。
さらに年収が下がっても良いと思う理由については、「やりたい職種・仕事内容に就きたいから」がトップ、次点で「経験・能力が活かせるポジションに就きたいから」、「組織・風土が自分に会う環境で働きたいから」、「入社時に一時的に下がっても、後で上げられる自信があるから」と続きます。
このような統計を参考にして自分の転職理由や目的を明らかにすることが、年収が下がっても転職を成功させるための最初のステップといえるでしょう。
出典:en転職「収入ダウン転職について」
年収と比較されやすい転職理由、転職先の希望条件とは
年収低下の許容範囲を決めるための重要項目「転職理由」について、さらに深堀りしてみましょう。前述のとおり、年収は自身の生活を築くうえで重要ですが、キャリアや健康、働きやすさなどの条件を優先すべきケースもたくさんあります。日本労働調査組合が2021年4月に発表した「仕事の退職動機に関するアンケート」では、年収を含む「評価・待遇に不満」がトップとなっています。それと比較対象になりやすいと考えられる5位までの理由を紹介します。
画像引用:日本労働調査組合:「【日労公式】仕事を辞めたい人は全体の3割強!退職動機に関する労働調査(2021年4月度プレスリリース)」
職場の人間関係
「評価・待遇に不満」と同率一位だったのが、全体の38.6%が該当した「職場の人間関係」です。同僚・先輩・後輩はもちろん、上司や経営者との考え方の相違は自分一人の力では改善するのは難しく、転職を考える人が多いようです。「上司が助けてくれない」、「公私混同が激しい」といった現状に悩んでいる人は、年収の下げ幅を大きくしてでも人間関係が良好の職場に転職した方が良いのかもしれません。
仕事の進め方、方法が非合理的
昔ながらアナログな仕事の進め方などに不満を感じていることを理由に転職を考える人は、全体の26.5%で3位となりました。こちらも職場の人間関係や待遇と同様、ネガティブな理由となっています。改善提案などが現実的に難しい際に転職を検討する人が多いと考えられます。
やりたいことがあるから
「やりたいことを仕事にしたい」という前向きな転職理由は、24.3%で4位にランクインしました。前述したen転職のデータによると「年収を下げられる理由」のトップであることから、年収よりも希望する比重を大きくする人が多いと考えられます。
労働時間・環境が不満
仕事量・残業が多い、通勤時間が長い、有給休暇が取りづらい、コロナ対策・環境が不安など、労働時間や環境に関する不満が5位以下に続きます。現在の労働の環境と現在の年収が「割に合わない」と感じたときに退職を決意する人が多いと考えられるでしょう。
現在の給料に見合う労働環境、時間はどの程度なのか。どんな制度や環境が整っていれば、給料が下がっても気持ち良く働けるのか。転職を成功させるには、しっかりと年収と理想の労働環境のバランスを考える必要がります。
年収が下がっても転職すべきケースとは
年収と天秤にかけることが多い「退職理由」について紹介しました。どの要素の比重が大きくなるかは人それぞれですが、少なくとも「自分や転職先の将来性が見込める」、「年収よりも貴重な 経験を得られる」、「キャリアや労働に関する課題を解決できる」という3つのポイントのいずれかが見込めるのであれば、年収が下がっても転職すべきケースだと考えられます。
年収を下げない3つの方法
年収が下がった場合の許容範囲を設けるだけでなく、なるべく年収を下げない転職方法も知っておいて損はありません。その代表的な3つの方法とポイントについて解説します。
成長企業、業界を選ぶ
給料は企業の売上から支払われます。そのため今後成長が見込める業界、企業に転職することで前職よりも年収を下げにくくすることができるでしょう。例えば、国内の一般利用者を対象としたクラウドサービス市場の規模は2020年で対前年比19.5%増の1兆654億円。2025年はその2.4倍の2兆5866億円に成長すると予測されています。
業界、業種に関わる転職理由ではないのであれば、まずは業界から絞り込んでみて企業を選ぶことをおすすめします。
出典:IDC Japan株式会社「国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表」
スキルや経験を棚卸して市場価値を上げる
自身のスキルを棚卸して整理し、倍率が高い好条件の求人にも採用が期待できるアピールポイントを作ることも大切です。1社目と2社目の業界、職種が異なる場合はその経歴や得たスキルをかけ合わせることで、ITスキル×営業経験、英語×営業などのように市場価値を大きく上げられるケースは少なくありません。
また、その際はただ自分のスキルをアピールするのではなく、求人情報をしっかりと確認してその企業がどのような人材を求めているかを分析し、応募企業ごとに最適化したものを履歴書や面接でPRしましょう。
面談時に交渉する
応募企業に給料の交渉を行うのは、内定後に行うことが一般的です。内定後に「オファー面談」もしくは「処遇面談」といって、担当する業務、ポジション、仕事内容、休日、残業時間などの処遇について確認する機会が設けられることがあります。オファー面談前に給料を交渉できるタイミングがあれば切り出すのがベストです。ただ、それまでにチャンスがなかった場合はオファー面談時に交渉することをおすすめします。
オファー面談で提示される条件には年収も含まれており、希望と異なれば内定者側の希望を伝えることも可能です。ただし、処遇面談の実施や内容に関するルールは企業ごとに異なるので、内定をもらう段階やもらったタイミングで処遇面談の有無を確認し、なければ実施を希望する旨を伝える必要があります。
交渉する際はその内容はもちろん、切り出すタイミングや伝え方には注意しなくてはなりません。悪い印象を与えてしまい、評価もマイナスになる恐れがあるからです。処遇面談でも開始いきなり年収の話をするのではなく、可能な限り先方から切り出すのを待ったり、年収について交渉する理由を明確にし、自分の主張ばかりせず相手の反応をしっかりと確認して交渉を進めましょう。
納得のいく年収で転職成功するにはエージェント利用がカギ
ここまで年収が下がる理由とその対策、年収が下がった場合の「許容範囲」の目安などについて紹介しました。年収が下がるのは一概に失敗とは言えません。成功したと感じられる転職を実現するためには「転職理由や目的の優先順位」を決めつつ、年収が下がらない、もしくは許容範囲内に収められるように調整する必要があります。これらの作業を一人で行うと負担が非常に大きく、思うように転職活動が進められない恐れもあります。
そこでおすすめしたいのが「転職エージェント」の活用です。転職エージェントは専任の担当者が面談を通して、転職希望者の条件などを一緒に棚卸してくれるので優先順位が決めやすくなります。年収の許容範囲についても、プロの知見からアドバイスをもらえるでしょう。また、希望条件を共有できれば、それにマッチする求人をエージェントが探して複数紹介してくれるのも魅力です。
また、年収の交渉などもエージェントが代わりに行ってくれることもあるので、より希望の年収とその他の条件の両立も実現しやすいでしょう。
特に地方転職を考えている人におすすめの転職エージェントが、ヒューレックスです。大手の転職エージェントにはない、地方ならではの求人を多数取り扱っているほか、希望条件に合う企業への転職を支援した実績多数。各人に最適な企業をご紹介し、面接などのアドバイスなども行っています。
転職と年収でお悩みの方はぜひ、ヒューレックスにご相談ください。
この記事の監修
須賀川 敏哉
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、大手証券会社に入社。人材業界では、通算20年以上のキャリア。10年間の証券営業を通じ、経済や景気動向、企業動向の見方を養う。 大手総合人材サービス会社では、首都圏拠点立ち上げ、新宿・丸の内支店長、金融・外資部長、東京本社エリアディレクターを歴任。 ヒューレックスでは、転職支援を中心に、コンサルタントとして幅広い職種と年齢層に対応。
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