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税理士の年収はいくら?
税理士の平均年収について男女別で解説します。税理士の年収の高さを考える時の参考として日本の世帯年収の中央値も紹介しています。
税理士の平均年収は男性約766万円・女性約509万円
2019年の賃金構造基本統計調査によると、税理士の平均年収は男性が766万8500円で女性が509万2700円です。男女合計の平均年収は683万6000円でした(税理士と会計士を合わせた統計です。会計士の年収データも含まれるため参考程度にお考え下さい)。
年収の内訳は、男性税理士の平均月収52万5000円に年間ボーナス136万2500円を足したものです。女性は、平均月収36万100円に年間ボーナス77万1500円を加算しました。
日本の世帯年収の中央値は437万円であるため、税理士の年収は他職種と比べて高いと言えます(2020年の厚生労働省「家計調査」参照)。税理士になるためには難易度の高い資格試験に合格し実務経験を積まなくてはいけないため、年収も高くなる傾向にあります。
男女で年収差があるのは、女性の方が出産や育児で離職したり、残業も出来なかったりするためだと考えられます。税理士は経験年数によって年収に差が出やすい職種です。
税理士は年齢によって年収に差がある
税理士の年齢別の年収を見ていきましょう。男性税理士の20代前半の平均年収は417万5100円で女性は365万3900円でした。最も年収の高い世代は、男性の場合60代前半の1263万5000円で、女性の場合60代後半の867万円です。
税理士は年齢が上がるにつれて年収も上がりやすいです。年齢を重ねて身につけた経験と知識が評価されやすい仕事と言えます。
また、税理士には定年がありません。出産や育児などでブランクがあっても復職しやすい利点もあります。「一生働き続けたい」「年齢を重ねるごとにキャリアも年収も上げていきたい」方におすすめの仕事です。
勤める企業規模によって年収とボーナスが異なる
税理士は、大企業勤めのほうが年収もボーナスも高い傾向にあります。企業規模1,000人以上の企業に勤める男性税理士の平均年間ボーナスは177万5000円でした。最も少ないボーナス額は、企業規模10~99人の企業に勤めている女性税理士の57万2700円です。
企業規模別のボーナス額
企業規模 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1,000人以上 | 177万5,000円 | 132万6,500円 |
10~99人 | 121万6,700円 | 57万2,700円 |
参考:2019年 賃金構造基本統計調査 |政府統計の総合窓口(e-Stat)
企業規模によってボーナスに差があるのは、収益力に差があるからです。中小規模の税理士法人の場合は、企業や個人事業主からの依頼がメインで記帳代行などを行うことも多くなります。
一方、大規模の税理士法人は、企業とコンサルティング契約を結んでいることが多いため、収益も高い傾向にあります。
また、税理士は税理士事務所より一般企業に勤める方が待遇もいいとされています。税務処理は内製化の動きが見られるため、社内事情に詳しい税の専門家として重宝されやすいからです。
税理士は短時間勤務でも年収が高い
税理士の資格があれば、パートやアルバイトなどの短時間労働でも高収入が得られます。厚生労働省の調査結果から短時間労働の税理士の時給について紹介します(「賃金構造基本統計調査」参照)。
本調査によると、短時間労働をしている税理士の1時間当たり時給の平均額は2,102円でした。労働時間は平均6.1時間で、労働日数は平均14.9日です。これに賞与などの6万100円が加算されます。
これらを加味すると、短時間労働の税理士の年収は235万円ということが分かります。アルバイトやパートの最低賃金額が最も高い東京都でも時給は1,041円です。税理士は「育児や出産、介護などで短時間勤務がしたい」という場合でも他の職種より高い時給で働けます。
税理士も人手不足であるため、人材確保のために時短勤務制度や在宅勤務制度を整えている会計事務所が増えつつあります。「税理士資格を持っているけど一線を退いている」という方は短時間勤務や契約社員として復職可能です。
都道府県別の税理士の年収
税理士の年収は、都道府県によっても異なります。各都道府県別の税理士の平均年収を以下の表にまとめました。
都道府県別税理士の平均年収
都道府県 | 税理士の平均年収 | 1世帯当たりの平均年収 |
---|---|---|
全国 | 683万6,000円 | 558万4,000円 |
宮城県 | 611万円 | 565万9,000円 |
東京都 | 1212万7,000円 | 629万7,000円 |
大阪府 | 847万9,000円 | 503万1,000円 |
広島県 | 821万3,000円 | 529万1,000円 |
税理士の全国平均の年収は683万600円です。年収が最も高い都道府県は、東京都の1212万7000円でした。宮城県の税理士の平均年収は611万円で、広島県の税理士の平均年収は821万3000円です。
総世帯の1世帯当たりの平均年収は558万4000円であることから、税理士は地方都市でも平均年収を上回りやすいことが分かります(総務省の調査を参照)。
全国的に税理士の求人が増えているため「地方都市で高い収入を得たい」と考えているU・Iターン希望者におすすめできる仕事です。
税理士試験の科目合格数と年収の相関関係
税理士試験は「科目合格制度」というシステムをとっています。これは、他の資格試験のように一括で試験に合格することが求められません。数年かけても構わないので、決められた科目の中から5科目で合格点を取れば良いというものです。1度合格した科目は生涯にわたり有効です。
そのため、1科目や2科目だけ合格して、会計事務所や税理士事務所に勤務する方もいます。勤務しながら資格試験の勉強を続ける形です。合格科目数によって年収はどれくらい違うかを見てみましょう。
科目合格数と年収
合格数 | 年収 |
---|---|
1科目 | 約370万円 |
2科目 | 約375万円 |
3科目 | 約384万円 |
4科目 | 約445万円 |
5科目 | 約640万円(税理士登録者) |
勤める税理士事務所や企業にもよりますが、3科目までは年収300万円代でも4科目合格から400万円代に上がることが多いです。
また、科目合格者は税理士事務所や会計事務所に勤務するより、一般企業に勤める方が年収も上がりやすくなります。税理士として登録できていなくても、科目試験に合格している「経理の専門家」として待遇が良くなるからです。
開業税理士の年収は二極化している
税理士のうち開業している方は全体の約8割と言われています。開業税理士の中には2,500万~1億円の所得を得ている方がいる一方で、年収300万円ほどの方も多いです。このように開業税理士の年収は二極化が進んでいます。
ただし、年収を引き下げている開業税理士の中には育児と両立している主婦の方や定年を迎えたシニア層などもいるようです。
主婦層やシニア層を考慮しなかったとしても、開業税理士の間で生じる年間所得の差は、税理士としてのスキル以外に、営業能力やコミュニケーション能力も影響していると考えられます。
高収益な案件を獲得するためには営業力が必要ですし、コンサルティングをするにはコミュニケーション能力が必要だからです。税理士として開業する前に、所属税理士として企業に勤務し、これらのノウハウを学んでおくこともおすすめします。
他の士業と税理士の年収を比較
税理士は医師や弁護士より年収は低いですが、社会保険労務士より高い傾向にあります(参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。
士業の平均年収
職種 | 平均年収 |
---|---|
税理士 | 683万6,000円 |
医師 | 1169万2,300円 |
弁護士 | 728万5,600円 |
社会保険労務士 | 486万200円 |
また税理士の年収は、コンサルティング料や作業料、オプション料などで成り立っています。これらは法的な規定がありましたが、現在では自由に設定できるようになっています。そのため、料金設定によっては大きく稼ぐ税理士もいると推測できます。
BIG4税理士法人の推定年収
BIG4税理士法人とは「PwC税理士法人」、「デロイト トーマツ税理士法人」、「KPMG税理士法人」、「EY税理士法人」という4つの法人を指します。世界規模で活躍している会計事務所グループの系列にある税理士法人のことです。。これらの4つの税理士法人の推定年収を紹介します。
BIG4税理士法人の役職者の推定年収
BIG4税理士法人の年収について公的なデータはありません。そのため、求人サイトなどを参考に推定年収について以下の表にまとめました。
BIG4税理士法人の役職別の推定年収
役職 | 年代 | 推定年収 |
---|---|---|
スタッフ | 20代前半 | 450~650万円 |
シニアスタッフ | 20代後半~30代前半 | 550~800万円 |
マネージャー・シニアマネージャー | 30代後半~40代前半 | 800~1,000万円 |
ディレクター・パートナー | 40代後半~50代前半 | 1,500万円以上 |
BIG4税理士法人は他の税理士事務所と異なり、役職を設けています。入社したばかりの頃はスタッフとして実務を積み、経験年数に応じて役職を上げていきます。ただし、マネージャーから昇格できるかどうかは本人の実力によるところが大きいです。ディレクターの最低年収は1,500万円以上といわれ、数千万円ほどの年収を得る方もいるようです。
BIG4税理士法人の推定初任給
BIG4税理士法人の推定初任給は約450~600万円です。BIG4税理士法人の推定初任給は以下の通りと推測されます。
BIG4税理士法人の推定初任給
PwC税理士法人 | 500~600万円 |
---|---|
デロイト トーマツ税理士法人 | 500~600万円 |
KPMG税理士法人 | 480~600万円 |
EY税理士法人 | 450~600万円 |
BIG4税理士法人はいずれも初任給が約450万円以上あります。ただし、税理士の年収は規模や地域、配属されるポジションによって大きく異なるため、ひとつの目安としてお考えください。
税理士と公認会計士の違い
税理士と公認会計士は会計の専門家という点で似ていますが、仕事内容、クライアント、就職先などが異なります。詳しく見ていきましょう。
税理士と公認会計士の違い
税理士 | 公認会計士 | |
---|---|---|
独占業務 | 税務書類の作成 税務代理 税務相談 |
財務諸表監査 |
クライアント | 中小企業 個人事業主 |
上場企業や大手企業 |
就職先 | 全国の税理士事務所や企業 独立開業 |
大都市圏の監査法人 |
受験資格 | 大学・短大の卒業者で特定の単位を履修した者 日商簿記検定1級合格者もしくは全経簿記検定上級合格者 一般企業や金融機関に就職して一定の職歴を積んだ者 |
なし |
公認会計士は上場企業や大手企業の財務諸表監査をメインに行い、税理士は中小企業や個人事業主の税務関係の業務を行います。
そのため、就職先も異なります。公認会計士は大手企業の集中している大都市圏で求人が多いですが、税理士は、中小企業や個人事業主が多い地方都市でも幅広く求められています。
ただし、税理士になるには受験資格をクリアしていなくてはいけません。次の「税理士になるには3つの方法がある」では、税理士になる方法について詳しく解説します。
税理士になるには3つの方法がある
税理士になるための3つの方法はこちらの通りです。
- 税理士試験に合格後、2年以上の実務経験を重ねる
- 税務署で23年以上勤務して、指定された条件を満たす
- 公認会計士か弁護士の資格を取得する
一般的なルートは「1.税理士試験に合格後、2年以上の実務経験を重ねる」です。
税理士は難易度の高い試験ですが、1度合格した科目は生涯に渡り有効です。そのため、税理士試験は、一度で複数科目に合格しなくてはいけない公認会計士より、時間をかけて資格取得に取り組めます。コツコツと勉強しながら合格を目指せるので、忙しく働く社会人向けの資格と言えます。
税理士が年収を上げる方法
税理士が年収を上げるには、転職エージェントを活用しましょう。税理士は企業規模やポジション、就職先によって年収が異なるからです。
税理士の転職に詳しいコンサルタントがいる転職エージェントに相談すると、自分に合った求人を紹介してもらうことができます。また転職エージェントは年収交渉代行を行うため、自分では言い出しにくい希望年収などについて伝えてもらうことが可能です。
実務で忙しい税理士や税理士試験の勉強で忙しい方は、転職エージェントに転職活動をサポートしてもらいましょう。
この記事の監修
須賀川 敏哉
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、大手証券会社に入社。人材業界では、通算20年以上のキャリア。10年間の証券営業を通じ、経済や景気動向、企業動向の見方を養う。 大手総合人材サービス会社では、首都圏拠点立ち上げ、新宿・丸の内支店長、金融・外資部長、東京本社エリアディレクターを歴任。 ヒューレックスでは、転職支援を中心に、コンサルタントとして幅広い職種と年齢層に対応。
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