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技術士とは
技術士とは、高度な科学技術や応用力、豊富な実務経験を認められた人に与えられる国家資格です。またこの試験では、公共の利益を重視して自らを律することのできる倫理観も求められます。
技術士になるまでには、一次試験に合格した後に4~7年の実務経験を積み、二次試験に合格する必要があります。なお、一次試験のみ合格した人は技術士補に登録できます。つまり、技術士補になるためには実務経験を問われませんが、技術士の場合には一定の実務経験が必要です。
技術士について詳しくは「技術士は転職に有利って本当?資格の取得方法と転職先を徹底調査」をご覧ください。
技術士・技術士補の試験は、下記の全21部門ごとに実施されています。
部門 | 業務例 |
---|---|
1.機械部門 | 機械設計・工場設計 |
2.船舶・海洋部門 | 船舶の設計・建造 |
3.航空・宇宙部門 | ロケット・航空機の開発 |
4.電気電子部門 | 情報通信ネットワークの開発 |
5.化学部門 | セラミックス・合成樹脂などの分析や開発 |
6.繊維部門 | 衣料や繊維の開発 |
7.金属部門 | 金属材料の生産システム開発 |
8.資源工学部門 | 金属鉱物の探査 |
9.建設部門 | 国土計画・都市計画 |
10.上下水道部門 | 上下水道計画 |
11.衛生工学部門 | 水質分析・測定 |
12.農業部門 | 食物の栽培・品種改良 |
13.森林部門 | 森林保全・管理 |
14.水産部門 | 水産物物流システム開発 |
15.経営工学部門 | 生産計画の物流マネジメント |
16.情報工学部門 | ソフトウェアの設計 |
17.応用理学部門 | 化学分析・土木地質調査 |
18.生物工学部門 | 環境微生物の調査 |
19.環境部門 | 環境測定計画・分析 |
20.原子力・放射線部門 | 原子炉システムの設計 |
21.総合技術監理部門 |
上記21部門のうち、希望する部門を1つ選択して受験することになります。
技術士の年収事情
技術士は科学分野での最高峰の国家資格であり、高度な専門知識や公共の利益を一番に考えられる倫理観を兼ね備えていることの証明になります。そのため、技術士の待遇は平均よりも良さそうすが、実際にはどうなのでしょうか。技術士の年収事情について詳しく見ていきます。
一般的な技術士の平均年収は約660万円
厚生労働省が実施した最新2019年度の賃金構造基本統計調査では、技術士を含む職種別の平均年収が公表されています。
この調査によると、「きまって支給する現金給与額」、つまり月給と「年間賞与その他特別給与額」を合算すると約660万円。すなわち、技術士の平均年収は約660万円であることが分かります。
この年収データの平均年齢は46.1歳、平均勤続年数は13.7年です。技術士試験には実務経験が必要であるため、平均年齢と勤続年数ともに高めの数値になっています。
国税庁が公表した令和2年分民間給与実態統計調査結果によると、国民全体の平均給与は433万円です。技術士の平均年収の約660万円と比較すると、技術士は全体の平均年収の約1.5倍でした。
以上の調査結果からは、技術士は高年収で、社会的に需要が多い職業であることが伺えます。
技術士の平均年収は上昇傾向
厚生労働省が実施の賃金構造基本統計調査は毎年行われていますが、先ほどのデータの昨年および一昨年の数値を見ていきます。
2017年度の技術士の年間の給与は約466万円。また、「年間賞与その他特別給与額」は約100万円で、2017年度の平均年収は約570万円であることが分かります。
2018年度の「きまって支給する現金給与額」と「賞与その他特別給与額」を合算すると平均年収は約560万円です。2017年度と比較すると2018年度は平均年収が若干低下しましたが、その翌年の2019年度には大幅に上昇していることがわかります。
この背景には、東京オリンピックによる建設需要の高まりと、それにともなう技術士の需要の増加があるとされています。東京オリンピックは閉幕しましたが、専門知識や技術で企業の発展に貢献している技術士は、今後も安定的な年収を期待できるはずです。
大企業の技術士の平均年収は約750万円
大企業の技術士は、技術士全体と比較して平均年収が高いです。厚生労働省が実施した2019年度の賃金構造基本統計調査では、従業員が1,000人以上の大企業に務めている技術士の平均年収データも公表しています。
大企業の場合「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」を合算すると、平均年収は約750円万円であることがわかります。これは技術士全体の平均年収である約660万円と比較するとおよそ100万円も高い計算です。
この結果からは、同じ技術士でも従業員数が多い大企業に勤めた方が、より良い待遇が期待できそうです。
技術士として年収アップを狙う時の注意点
技術士・技術士補の資格を取得することで年収アップを期待できますが、いくつか注意すべきポイントがあります。
ここでは、技術士として高年収を狙うときに知っておきたい注意点を紹介します。
技術士補は技術士ほどの年収を見込めないことも
前述した技術士の平均年収には、技術士補のデータが含まれていないことを忘れてはいけません。厚生労働省が公表した「賃金構造基本統計調査の現行の職種解説」によると、技術士の平均年収データに技術士補は含まれません。
技術士は国民全体と比較して高い年収を誇るものの、実務試験を要しない技術士補では技術士ほど高い年収を見込めない可能性があります。企業によっては、技術士補の有資格者に資格手当を支給しているケースがあるため、その場合には年収アップにつながります。
業種によって年収は変わる
同じ技術士であっても、就職先の業界によって年収が変動する点にも注意が必要です。厚生労働省が実施した令和2年度の賃金構造基本統計調査では、主な産業別の平均賃金データが公表されています。
技術士は選択した分野によって就職先の業界も変わりますが、このデータでは建設業・製造業・情報通信業の3つで技術士が多いと予想されます。これら3つの業界の平均月給は、建設業が345,500円、製造業が321,800円、情報通信業が405,000円です。
このデータからは、同じ技術士でも勤める業界によって年収が変動する可能性があることがわかります。
技術士が年収アップを狙いやすい業界
技術士は、科学分野で認知度と評価が高い国家資格です。そのため、社会的ニーズも高く年収アップも狙いやすい資格となっています。ここからは技術士のニーズが特に高く年収アップを期待できる業界を解説していきます。
建設業界
建設業界は、技術士のニーズが高い業界の代表的な例です。工事の入札においては、技術士の資格保有者在籍を参加条件とするケースがあります。
また、技術士が企業にいることで信頼度が高まって入札に有利になる可能性もあります。こういった理由から、建設業界では技術士の必要性が高く、年収アップなど良い待遇を期待できるはずです。
コンサルティング業界
建設コンサルタントや都市計画コンサルタントといった業界においても、技術者の在籍が信頼度を高めて受注につながるケースがあります。
特に、公共事業では発注先に対する信頼度の高さが重視されるため、技術士がいることで受注率を高められる可能性があります。コンサルタント業界も、技術士の年収アップを狙いやすい業界のひとつです。
情報通信業界
先ほど紹介した令和2年度の賃金構造基本統計調査では、技術士が多いとされる3つの業界のうち情報通信業が最も平均賃金が高いため、技術士の資格を活かして最も年収アップを狙いやすいのは情報通信業界と言えます。
情報工学部門や電気電子部門などが、情報通信業と関連する技術士の試験分野です。情報通信業への就職を狙う場合には、こういった分野の選択がおすすめです。
技術士が転職で年収アップを狙うためには
ここまでは技術士の年収の高さやおすすめの業界を解説してきましたが、ここからは実際に転職で技術士資格を活かすためのポイントを見ていきます。技術士はただ取得すれば良いわけではなく、技術士資格を活かせる企業探しが重要です。
資格手当のある企業を探す
技術士・技術士補の資格を年収アップにつなげるためには、これらの資格に対して手当を支給している企業を探すことをおすすめします。月々の手当支給額は微々たるものであっても、年間に換算するとかなりの金額になるため、資格手当の有無を条件に加えると優良企業が見つかるかもしれません。
技術士補は実務経験を積める企業を選ぶ
技術士になるためには、技術士補としての実務経験を最低でも4年積む必要があります。そのため、技術士の受験資格の実務経験に該当する業務を行える企業を選ぶのがおすすめです。
転職サイトの情報だけではこうした実務経験を積めるかどうかがわかりにくいため、転職エージェントに相談して詳しい情報を得るようにしてください。
転職エージェントに登録する
転職エージェントでは求人情報の紹介だけではなく、書類の添削や面接の指導も行っています。そのため、技術士・技術士補が転職を有利にするためのポイントを把握できるうえに、資格手当があったり実務経験を積めたりといった企業の紹介を受けられます。
まずは転職エージェントに登録して、自分の希望に合った求人の紹介を受けてみてください。
技術士が年収アップを目指すなら転職エージェントに相談しよう
技術士は科学分野で評価が高く、年収アップにつながりやすい国家資格です。しかし、技術士資格を有しているだけでは効果が薄く、資格を活かせる企業探しや面接でのアピールが必要です。
転職エージェントのヒューレックスは、技術士の年収アップにつなげるための転職のポイントやノウハウを有しているため、効果的なアドバイスと有益な情報を提供できます。
技術士・技術士補で年収アップを目指す人、これらの資格の取得を検討している人は、ぜひ一度ヒューレックスにご相談ください。
この記事の監修
須賀川 敏哉
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、大手証券会社に入社。人材業界では、通算20年以上のキャリア。10年間の証券営業を通じ、経済や景気動向、企業動向の見方を養う。 大手総合人材サービス会社では、首都圏拠点立ち上げ、新宿・丸の内支店長、金融・外資部長、東京本社エリアディレクターを歴任。 ヒューレックスでは、転職支援を中心に、コンサルタントとして幅広い職種と年齢層に対応。
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