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税理士は転職市場では有利?採用ニーズは?
転職によって希望条件を叶えるためには、転職市場全体の概要を押さえておくことが大切です。
近年、税理士が転職市場でどのような位置付けにあるのかを見ていきましょう。
全体的な動向
税理士の転職市場は、全体的に需要が多い状況が続いています。
厚生労働省が発表している「職業情報提供サイト」によると、令和2年度の税理士の有効求人倍率は2倍です。
2020年10月~2021年10月の全体の有効求人倍率が1.0~1.15の間で推移していることを考えても、税理士の求人数が多いことは間違いありません。
地域や職務内容によって求人数や倍率が異なるためあくまでも目安に過ぎませんが、税理士の方は転職によって給料アップや希望の労働条件が実現しやすい状況です。
需要が多い背景
転職市場で税理士の需要が多い背景には、以下の4つの事情があります。
画像参考:【速報】令和2年度税理士試験合格発表 合格者数5,402人・合格率20.3%|MS Agent
1.税理士試験の受験者・合格者が減少傾向にある
退職や引退をされる60代以上の税理士が増えている一方で、新たな税理士の担い手は減少傾向にあります。トータルでの需給を考えても、労働市場全体で需要が多い状態です。
2.税理士法人の数が増加している
税理士業務が複雑化・高度化する状況下で、個人事業主としてではなく複数名で法人化する担当者が多いことから、税理士法人の数が年々増加しています。また、一般企業からも税理士のニーズがあり、就職・転職の受け皿としてもニーズが高い状態です。
3.法改正がおこなわれるたびに税理士のニーズが生じる
消費税や法人税などの法律が変更されるたびに、企業は新たな税制の変更などの対応を迫られます。対応漏れや間違いが生じると、企業は顧客・取引先・従業員からの信用低下につながるリスクも考えられます。
こうした法律改正の際に重宝されるのは、税務の専門家である税理士です。小さな変更も含まれば法改正は頻繁にあるため、税理士のニーズが途切れることはないでしょう。
4事業継承や相続などの伸びている分野がある
団塊の世代が70代中盤にさしかかり事業の継承や終活を意識する方が増えているなかでに、事業継承や相続に関連する仕事のボリュームが膨らんでします。社会のニーズに応える形で、これらを専門領域とする税理士も増えています。
これらの状況から、税理士のニーズが高い状況は今後もしばらく継続するでしょう。
税理士の将来性についてのネガティブな論調として、AIに仕事が奪われるという説があります。しかし、イレギュラーな事案への対応やクライアントの心情を踏まえたアドバイスなどAIには苦手な領域があることから税理士の仕事は当面安泰だと考えられます。
税理士転職の選択肢とは?
税理士の勤め先として最も一般的な職場は税理士法人ですが、税理士にはさまざまなキャリアの選択肢があります。
この章では、税理士の勤め先として代表的なものを4つ紹介します。
求人数や転職後の業務状況にも影響する繁閑時期の目安についても解説しているので、転職時期の目安としても参考にしていただけたら幸いです。
税理士法人
税理士法人は、BIG4といわれる最大手税理士法人から個人事業主まで、さまざまな規模・種類があります。
一般的な対応業務は、クライアントの税務関連書類の作成・チェック・コンサルティング業務などです。BIG4をはじめとした大手税理士事務所では、大手企業をクライアントとしてもつことが多く、より高度な専門性を要求される傾向があります。
繁忙期は、11月から5月頃です。特に、企業の年末調整(12~1月)・確定申告(2~3月)・決算期などは多忙を極めるでしょう。
一般企業
一般企業の経理部門・税務部門において税理士のニーズがあります。
特に大手企業では、自社で税理士を雇用する企業が多いです。
繁忙期は、業務内容により異なりますが、月末・決算期・年度末などが多忙になりやすいでしょう。
一般企業への転職の注意点は評価基準です。企業によっては、税理士資格を保有していても給与査定に大きく反映されないこともあります。また、転職時にアピール材料にはなりますが、どの程度優遇されるのかは転職先の評価制度次第です。
金融関連の業界
銀行・証券会社・リース会社などの金融機関においても税務のスペシャリストとして金融機関のニーズがあります。
これらの金融関連の業界では、バックオフィスでもフロントでも高度な税務に関する知識が必要とされるケースが多いためです。
金融機関においては、企業の決算が集中する3月・6月・9月・12月が繁忙期です。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでにおいては、税務や会計のスペシャリストとして、税理士のニーズがあります。
コンサルティングファームは、クライアントと一定期間の包括的な契約を結ぶことが多いため、案件の契約状況によって繁忙期が変わります。
年代別の税理士転職のポイントと必要とされるスキル
税理士が、税理士法人や企業から必要とされるものは、専門知識と実務能力です。
したがって、税理士資格と経験が要求されます。また、転職先によっては英語力が要求される場合も考えられます。海外進出や海外の現地法人との取引などに関わる場合には、英語の書類に目を通したりコミュニケーションを取ったりする必要があるためです。
以上を踏まえて、年代別の税理士の転職のポイントを解説します。
20代は未経験でもチャンスがある!
若手として見なされる20代は、ポテンシャル採用のチャンスがあります。
- 税理士資格をまだ取得していない
- 税理士資格は取得しているものの、実務経験がない
これらに該当する場合でも、転職の可能性は小さくありません。
ただし、「未経験」とはいっても税理士資格に1科目も受かっていない状態では、「税理士」としてのポテンシャルを買ってもらうことは難しいでしょう。1科目以上は資格に取っている状態で、転職活動をスタートしましょう。
また、未経験者の転職先は若干制限されます。
採用の可能性が高いのは、中小規模の税理士法人です。特に業務が多忙で人手が足りていない状況の税理士法人の方が採用される可能性が高いです。反対に一般企業の経理職や大手税理士法人への転職の可能性は低いです。
経験者の場合は、採用の可能性はさらに高まります。特に20代で数年間以上の税理士経験のある方は、転職によって収入アップを目指しやすいのではないでしょうか。
さらに、英語力などのアピールできるスキルがあると、より転職がしやすくなります。
30代は3年以上の実務経験が目安
30代の税理士は、即戦力として一定の実務経験が要求されます。
一つの目安としては、3年以上の実務経験が必要です。30代になると、ポテンシャル採用の側面はかなり弱くなるため、税理士資格を取得していない方や税理士としての就業経験のない方の税理士としての転職は非現実的でしょう。
さらに、過去の実務経験の内容も重要視されます。
担当したクライアントの数・業種・業務内容・担当した期間などかなり具体的なことを採用面接の際に問われることが多いです。
30代後半の方は、マネジメント経験の重要性が高まります。
40代は確かな専門性が必須!
40代は、税理士としては比較的若い世代です。
しかしながら、40代の税理士転職は高度な専門性と確かな実績が要求されます。国際税務の経験や事業継承の対応など、確かな実績をご自身の強みとしてアピールしましょう。
また、転職における動機・目的のアピールも大切です。
- なぜ転職をしたいのか?
- 転職によって何を実現したいのか?
- どのような業務にて強みを発揮できるのか?
上記の内容を面接の際に的確に伝えることが大切です。特に税理士事務所から一般企業や金融業界に転職される場合などは、明確な根拠が必要です。
また、長年の実績があり税理士としてのスキルや人脈のある方は、独立を視野に入れるという選択肢もあります。
豊富な経験があれば50代でもチャンスあり!
高度な専門性・豊富な実績のある税理士の方は、50代であっても転職のチャンスがあります。
税理士は全体的に人材が不足しているためです。特に中小規模の税理士法人は、年齢に関係なく即戦力性があれば採用に前向きな姿勢を取る事務所も珍しくありません。
また、税理士の業務は活躍の裾野が広く業務が細分化しているだけに、より自身の得意な分野で仕事をしたいと考える方は多数みえます。
50代の方が転職において、十分なスキルや経験が備わっていることは言うまでもありませんが、さらに以下のポイントがチェックされます。
- 転職理由に説得力があること
- 前職・前々職の就労期間が長期間であること
- 代表者との相性が合うこと
50代での転職の場合は、転職先でも幹部に近い状態で採用されるケースも多々あるため、代表者との相性などがより重要視される傾向があります。
税理士転職で年収・収入はどうなる?
専門資格保有者である税理士は、転職市場においても一定の収入が確保されます。したがって、前提条件として収入面での安定性が期待できることは間違いないでしょう。
税理士は、転職先の業種によって収入が大きく左右されます。
税理士事務所の最低ラインは年収500万円~
小規模・個人運営の税理士事務所の補助税理士の一般的な年収が、500万~600万円です。従って、税理士事務所は500万円を最低のラインとして、経験・実績・能力・勤務先の規定などにより給与が確定します。
税理士資格を保有し、税理士として勤務しているにも関わらず年収が500万円を下回っている方や、経験やスキルがあるにも関わらず500万円台の年収の方は、転職によって給与アップを目指せる可能性があります。
専門性の高い職種や管理職では高収入が期待できる
事業継承やM&Aのコンサルティングなど高度な専門性を発揮する税理士は、年収700万円以上の収入が期待できます。また、傾向として事務所の規模が大きくなればなるほど給与の水準は高いです。
BIG4をはじめとした大手税理士法人のマネージャー職にもなると、年収1,000万円に到達することもあります。
一般企業や金融機関は勤務先の基準
一般企業や金融機関に転職をする場合は、税理士としての技術や経験よりも給与先の規定によって左右されると考えた方がよいでしょう。
したがって、一部上場企業や成長企業のマネージャー職として採用された場合には、高収入を期待できます。
一方、中小企業の経理部などに勤務する際には経理スタッフとしての給与水準となるため、500万円以下の水準になることも珍しくありません。
転職先の選び方やスキルの活用法によって、収入が大きく変動するのが一般企業や金融機関への転職の特徴と言えるでしょう。
有利な条件での転職を希望する方は転職エージェントへの相談がオススメ
税理士は、仕事が増えニーズが高まっているにも関わらず人材不足の状況です。したがって、労働市場では求職者にとって比較的有利な状況であると言えます。
ポテンシャルのある20代の方や経験実績が豊富な30代以上の方にとって、税理士としての転職は比較的難しくないでしょう。ただし、年収や勤務条件などの希望を叶えるためには、転職先の選び方が大きなポイントになります。
そこでオススメしたいのが転職エージェントの利用です。転職支援実績が豊富な転職エージェントに相談すれば、ご自身のキャリアを客観的に見直し、スキルや経験を活かせる転職先を効率よく見つけられるでしょう。
ヒューレックスは、クライアント企業との結びつきが深く、一般の転職市場には公開されていない企業や税理士事務所の求人やマネジメント関連の求人を独占で取り扱っております。
無料での転職相談に対応しているので、税理士としての転職を考えている方は、ぜひ気軽にご相談ください。
この記事の監修
須賀川 敏哉
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、大手証券会社に入社。人材業界では、通算20年以上のキャリア。10年間の証券営業を通じ、経済や景気動向、企業動向の見方を養う。 大手総合人材サービス会社では、首都圏拠点立ち上げ、新宿・丸の内支店長、金融・外資部長、東京本社エリアディレクターを歴任。 ヒューレックスでは、転職支援を中心に、コンサルタントとして幅広い職種と年齢層に対応。
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