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エンジニアの転職は簡単?難しい?
IT業界では長い間人手不足が問題視されており、どこの企業も即戦力を求めています。
実際、エンジニアの求人情報を見ても「経験者募集」と記載されている場合が多く、ある程度のスキルと知識が求められていることが伺えます。
果たしてエンジニアの転職の実態はどのようなものなのでしょうか。ここではエンジニア経験者と未経験者に分けて、それぞれ見ていきましょう。
エンジニア経験者の転職のハードルは低め
厚生労働省の調査によると、2021年12月時点で情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.92倍と高い数値を記録しています。つまり、エンジニアでの転職希望者よりも、求人を募集している企業の方が多い売り手市場と言えるでしょう。
そのため、企業が求めているスキルや知識、実務経験を持っている方であれば、エンジニアの転職はそう難しくありません。とはいえ、必ずしも自分の理想通りの転職ができるわけではありません。
給与額や賞与額が高い企業であれば、求めている人材のレベルも高くなってくるでしょう。自分の能力に見合った転職先では、希望条件が満たせないという場合も考えられます。
IT業界全体では経験者の転職ハードルは低めですが、「自分の希望通りの転職を実現するのは容易ではない」ということを念頭に入れておきましょう。
※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年12月分及び令和3年分)について」
エンジニア未経験者の転職は容易ではない
エンジニアのみならずIT業界では、入社後すぐに自社プロジェクトに参加・貢献できる即戦力を求める傾向にあります。
実際、求人の募集要項にも「経験者優遇」「実務経験○年以上」などと記載されていることが多く、未経験は応募すらできない場合もあるでしょう。
しかし、2019年の経済産業省の調査では2030年ごろには100万人超の人材不足に陥ると予測されています。そのため、将来的にIT業界全体で慢性的なエンジニア不足が続くと予想できます。
これによって、企業側も経験者のみを雇用するわけにはいかなくなり、エンジニア未経験者でも受け入れてもらえる可能性が高くなります。
もし、現段階で企業側が求めるレベルに達していなかったとしても、根気強く勉強を続けていくことで、チャンスが巡ってくるかもしれません。
未経験でエンジニア転職を目指す場合、自分を雇ってくれる企業がないからといって諦めず、愚直に努力を重ねることが重要になってくるでしょう。
※出典:経済産業省・みずほ銀行「ーIT人材需給に関する調査ー」
エンジニア転職の失敗につながる3大要因
リクナビNEXTが転職を行ったエンジニアに対して実施したアンケートによると、約30%の割合で「転職後の年収に不満がある」と答えています。
もちろん、転職先の企業に何を求めるかは人それぞれであり、給与額の優先順位が低い方もいらっしゃるでしょう。それを考慮しても転職に満足していない方が30%いるのは、やや高い割合かもしれません。
エンジニアとしての転職で満足できない結果となるのは何が原因なのでしょうか。以下ではエンジニア転職において失敗につながる要因を3つ紹介していきます。
※出典:リクナビNEXT「転職直後の年収アップは51%!転職の理由と満足度は?」
キャリア形成に適した企業・職種を選んでいない
エンジニアがキャリアアップを目指す場合、キャリア先は大きく4つに大別されます。
同僚や部下に指示を出しながら、プロジェクトを成功へと導く「マネジメント(プロジェクトリーダー・チームリーダー)」。一つの専門分野を突き詰めた「スペシャリスト」。様々なプログラミング言語を操り、どんな開発現場、システム構築も対応できる「ゼネラリスト」。エンジニアとしての経験やスキル、実績を利用した「他の職種(営業、マーケティングなど)」へのキャリアチェンジの4つです。
また、それぞれのキャリア中でも、担当領域や業務内容、求められる専門知識によって細分化されます。
例えば、スペシャリスト系のキャリアでは、コンピューターネットワークの構築・保守・管理を行うネットワークエンジニアやデータベースの開発・設計・運用・管理を行うデータベースエンジニアなどが上げられます。
どのキャリアを選ぶにしても、キャリア内で細分化された職種はそれぞれの領域を任せられる人材として、企業から重宝されます。そのため、特定の職種を目指す場合、キャリア形成に適した企業で数年の実務経験を積み、必要となる専門知識や実務スキルを手に入れる必要があるでしょう。
あなたがスペシャリスト系の職種を目指しているならば、1つの分野に特化して業務を行える企業へ転職する必要があります。もし、転職先でマネジメントやゼネラリストとしての仕事を求められると、スペシャリスト系の職種へとキャリアアップするために必要な専門知識や実務スキルは身に付かないでしょう。
自分が何を目指したいのかを考えずに転職してしまうと、後から遠回りを強いられることとなり、将来的に後悔するかもしれません。
転職先の仕事内容を十分に把握できていない
同じIT業界と言えど、企業によって担当する業務範囲や業務内容、働き方は異なります。自分の目指したいキャリアが定まっていたとしても、勤めている企業の業務内容と合致していなければ意味がありません。
例えば、システム開発のエンジニアになりたかったとしても、転職先の業務が簡単なプログラミングや数値管理などの単純作業の場合、業務を通じたスキルアップは難しいでしょう。
求人内容に「○○募集!」「△△歓迎!」などが記載されていたとしても、実際の業務内容は何なのかを確認しておく必要があります。
また、仕事内容は「何をするのか?」だけでなく「どのように働くのか?」という部分についても把握しておかなければいけません。
例えば、客先常駐が多い職場であれば、クライアントからのストレスは避けられないでしょう。企業によっては月残業時間が100時間を超える場合もあり、残業代を含めた給料が多くとも、体力面や疲労から後悔する人もいます。
転職先の仕事内容をあらかじめ十分把握しておくことで、これらの転職後に直面するギャップを無くせるでしょう。
知名度やイメージ、安定、年収にこだわりすぎる
自分が従事する企業に何を求めるのかは人によって様々です。年収が低くともキャリア形成のために働く人もいれば、実務時間が長くとも給与面や将来性に魅力を感じて従事する人もいます。
重要なのは会社の知名度やイメージ、安定、年収だけでなく、業務内容や自分のキャリア形成、将来性などから総合的に判断することです。
特に「自分が何をしたいのか」という能動的な理由は、企業からも重視されます。
転職先への志望理由が知名度やイメージ、安定、年収だけでは採用担当から高評価は得られないでしょう。自らの積極性や主体性を面接官に感じさせられなければ、いつまでも内定をもらえず転職活動に苦労するかもしれません。
たとえ内定をもらったとしても、転職前にもっと考えておけばよかったという後悔にもつながるため、転職先企業は自身の希望条件と照らし合わせながら総合的に判断しましょう。
エンジニアが転職を成功させる4つのポイント
これまで紹介してきたポイントに注意しなければ、転職後に後悔するかもしれません。転職活動をはじめる前には、後悔する要因をあらかじめ確認するようにしましょう。
では逆にエンジニアが転職を成功させるには、どのようなポイントに気を付ければよいでしょうか。エンジニアが転職を成功させるポイントを4つほど紹介していきます。
焦らずにじっくりと情報収集を行う
転職活動が長引くと焦りを感じる方もいるでしょう。しかし、焦って内定をもらおうとすると、情報収集を怠り転職に失敗する要因となることもあります。
そのため、転職先が決まらなかったとしても焦らず、情報収集を欠かさないようにしましょう。
また、焦りの原因を作らないようにするのも重要です。貯金や退職金があるからと言って、今の職場を退職してから転職活動をするのは止めましょう。
転職活動が長引くにつれて、生活資金が無くなっていく不安は大きくなり、やがて「どこでも良いから転職したい」という焦りにつながります。
残業時間が長く仕事以外何もできない、仕事のストレスが大きく今すぐにでも退職したい、という場合でなければ、普段の業務と平行して転職活動を行うのがおすすめです。
自分の弱みは勉強して補う
転職市場や業界分析、企業分析といった情報収集を通じて、自分の足りない部分が見えてきたならば、それを補うよう勉強するのも良いでしょう。
たとえ、魅力的な求人があったとしても、自分のスキル不足が原因で内定をもらえなかったという事例も少なくありません。
もし、自分の条件に合う求人情報が見つからないという場合は、一度企業選びを中断して自己研鑽に努めるのがおすすめです。
自分だけでは「何が足りないのか」「企業が何を求めているのか」分からないという方は、転職エージェントに相談してみましょう。転職エージェントでは転職活動の専門家であるキャリアアドバイザーが、転職活動を総合的にサポートしてくれます。
転職者が企業に求める条件に対して、現状のスキルでは転職が難しい場合、実際の求人情報をもとに足りない部分を教えてもらえるでしょう。
会社の知名度やイメージばかりを重視しない
会社の知名度やイメージといった受け身な理由で転職先を選ぶのは、転職失敗の要因となります。企業選びは業務内容や将来性などから総合的に判断しなければいけません。
企業の知名度やイメージなどの受け身な理由を重視してしまう原因は「自分が何をしたいのか」「自分が何を目指しているのか」といった自分の軸が定まっていないためです。
転職をする際には改めて自分の将来について考えてみましょう。もし、いくら考えても答えがでないという場合は、単純に知らないことが多いというのも考えられます。
業界のことや職種についての知識を集めると、自然と自分のやりたいことや、目指したいものが見つかるかもしれません。
すでにIT業界に身を置いている方ならば、異業種交流会や勉強会、セミナーなどで話を聞いてみるのも良いでしょう。
また「自分はどんな働き方をしたいのか」「どれだけ年収が欲しいのか」といった自己分析を通じて重視する条件を絞り、実現できる職種や企業を選ぶのもおすすめです。
現状のスキルや能力では実現が難しかったとしても将来的な目標点が定まれば、転職先の企業や条件が絞られていきます。
キャリアプランを設計して履歴書に落とし込む
せっかく目標点が定まってもどのように実現するのかが抽象的なままでは、いつまでたっても実現できません。
情報収集や自己分析を通じて自分の目標点が定まったならば、より具体的なキャリアプランを設計し、履歴書に落とし込みましょう。
履歴書に落とし込むことで応募先企業に対して「自分が何を目指しているのか」「転職先企業で何を達成したいのか」「転職先企業でなければいけない理由」を伝えることができます。
あなたの誠実性や将来性を人事担当者にも感じさせることができ、内定をもらえる可能性も高くなるでしょう。
エンジニアのキャリアプランの設計方法
転職する際に自分のキャリアプランを作成するのは、内定をもらうためだけでなく、転職に後悔しないためにも重要です。
とはいえ、自分のキャリアプランを設計したことがないという方も少なくないでしょう。最後にエンジニアのキャリアプラン設計方法について紹介していきます。
ステップ1:志向の明確化
エンジニアのキャリアプランを設計するならば、まずは「マネジメント」「スペシャリスト」「ゼネラリスト」の内、どれに進みたいのかを決め、自分の志向を明確化しましょう。
- マネジメント:プロジェクトの管理やチーム育成などを担う人材
- スペシャリスト:特定の分野について知識面、技術面で専門性を持った人材
- ゼネラリスト:対応できる業務の幅を広めていき、どのような開発現場、システム構築でも従事できる人材
どれか一つに絞れなくとも、自分が目指したいキャリアについて比重を確認しましょう。
- スペシャリストではなく、ゼネラリストとして働きたい。また、一人のプレイヤーとして色々な案件に携わりたい
- どちらかと言えばスペシャリストとして働きたいが、将来的にはマネジメントにも挑戦したい
過去に関わった案件から、楽しかったこと、自分には合わなかったことなどを見つけ、比重を探っていくのも良いでしょう。
ステップ2:スキルとキャリアの棚卸と自己分析
続いてこれまでのキャリアの棚卸をして、自分が持っているスキルは何なのか自己分析してみましょう。キャリアの棚卸では以下の項目に注目して、過去の経験を整理します。
- 所属していた企業、部署:自分が所属していた企業や部署はどのような事業や案件を行っていたのか(例:web系サービスや金融系のシステム開発など)
- 業務内容:自分が担当していた業務は何だったのか(例:システム開発、保守点検、品質管理、マネジメントなど)
- 業務範囲:業務は全体の中でどの範囲に属していたのか(例:B to BとB to Cのうちどちらか、上流工程なのか下流工程なのか、フロントエンドかバックエンドかなど)
- 習得しているスキル:業務を通じて習得したスキルや資格、知識は何か(例:プログラミング言語、マネジメントスキル、営業スキルなど)
- 入社理由、退社理由:自分が前職、現職に志望した理由、ならびに辞めた理由は何か
「業務内容」や「習得しているスキル」に着目すると、過去の案件や携わったプロジェクトで得ることができたスキルを把握できます。プログラミング言語やシステム構築といった専門的なスキルだけでなく、マネジメント能力や問題解決能力といった汎用的なビジネススキルも洗い出しましょう。
また、どのような案件で何を感じたのかを見つめ直すことで、自分が企業や仕事に何を求めているのかを把握できるでしょう。
ステップ3:スキルやキャリアを活かせるポジションの把握
キャリアの棚卸を通じて、自分のスキルや実績が分かったならば、それらを活かせるポジションを考えていきましょう。具体的には「業務内容」や「業務範囲」での重なりが大きいほど、今までの経験を生かせるポジションと言えます。
例えば、前職の「業務内容」がシステム開発であり、転職先企業の「業務内容」もシステム開発だった場合、多少「業務範囲」が変わったとしても十分に活躍できるでしょう。
逆に自分の目指すポジションの「業務内容」や「業務範囲」がこれまでのキャリアと重ならなかった場合、ギャップとなっている分だけスキルや経験、知識を埋めていく必要があります。
ステップ4:ルートの策定と実施
最後に自分が目指すポジションにたどり着くためのルートを策定しましょう。
もし、目指しているポジションとこれまでのキャリアでのギャップが小さかった場合、今持っているスキルや能力をアピールすることで、即戦力として内定をもらえるかもしれません。
目指すポジションとこれまでのキャリアでギャップがある場合、まずは現職でその差を埋めるよう努めましょう。現在の部署で経験できる業務に限りがあるならば、異動を申し出るのも手です。
現在の職場で挑戦できることに限界を感じたならば、転職を通じてギャップを埋めていくのもおすすめです。不足しているスキルや経験を把握した上で転職し、転職先で身に着けていきます。足りないスキルや経験が多い場合、2社、3社と渡り歩いていく必要もあるでしょう。
当然、一度の転職で自分の目指すポジションに就くのが理想です。しかし、これまでのキャリアを棚卸した上で転職が難しいこともあります。
こうした場合、転職を繰り返して徐々にギャップを埋めていく方が、自分の目指すポジションへの近道となります。
エンジニア転職は未来のキャリアに向き合うのが大切
転職の際に企業の年収やイメージ、会社規模を考慮するのは悪いことではありません
しかし、エンジニア転職では企業への転職を通じて「自分が何をしたいのか」「自分は何を目指したいのか」といった能動的な理由を深く考えていく必要があります。
たとえ年収面で妥協することになっても、そこで得られるスキルや知識を生かせると、将来的なキャリアアップを実現できるでしょう。地方転職に特化した転職エージェント「ヒューレックス」では、エンジニアの非公開求人をご紹介可能です。興味がある方はぜひ登録してください。
この記事の監修
神谷 貴宏
愛知県出身。大手証券会社、半導体商社の営業を経て、総合人材サービス会社へ入社。 仙台支店での勤務後、大型派遣案件の企画から運用に従事。その後、会社の中核を担う“正社員”のサポートに携わりたいという思いが強くなり、ヒューレックスの設立に参画する。 17年余りにわたるコンサルタントの経験の中で3,000名を超える方々をサポート。個々人の”キャリア”だけでなく”価値観”を大切にしている。
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