30代の転職における資格事情
自分の市場価値を表すステータスとして、転職時に資格取得を検討する人は少なくありません。ここでは、30代の転職市場における資格事情を解説します。
人事が重視するスキルは「IT」と「マーケティング」
診断士ゼミナールを開催する株式会社レボが実施した、「人事担当者が求める人材調査」によると、「中途採用時に求職者に求めるスキル」の トップはIT関連の33.4%。次いで31.6%のマーケティング関連となっています。
この背景には、ビジネスにおける急速なIT化やDX化が考えられます。IT分野に強いことをアピールするために、IT関連の資格を取得するのもおすすめです。
マーケティング関連のスキルには、「企画力」「データ分析力」「プレゼンテーション力」があります。いずれも顧客のニーズを掴んで商品やサービスを打ち出す能力です。
このようなスキルは利益向上につながりやすく、中途採用では即戦力を期待されるため取得していると有利になるかもしれません。
画像引用:【人事担当者1,104人へアンケート!】約7割の人事担当者が〇〇は有利だと回答!転職活動のために本当に必要な対策とは?(株式会社レボ)|PR TIMES
資格が採用の決め手になることもある
同調査では、「採用時に資格保有者を優先するか否か」についても尋ねています。その結果、「資格保有者を優先する」と回答した人事担当者は69.1%。実に7割もの人事担当者が資格の有無を重視していることがわかりました。
中途採用試験においては、実務経験が問われる一方で、資格の保有も十分なアピールポイントになり得ます。転職を考える人は、資格を取得しておいて損はなさそうです。
画像引用:【人事担当者1,104人へアンケート!】約7割の人事担当者が〇〇は有利だと回答!転職活動のために本当に必要な対策とは?(株式会社レボ)|PR TIMES
転職活動時に資格を取得した30代は約20%
未経験の職種への転職を希望する人は、どの程度資格を取得しているのでしょうか。
30代で未経験の仕事に転職した人を対象に、株式会社ビズヒッツが行ったアンケート調査によると、「未経験の仕事をするために準備をした」人の割合は49.3%。全体の約半数もの人が何らかの準備をしています。
準備した内容については、「資格や免許の取得」が38.6%で最多です。したがって、未経験の仕事への転職活動時には、5人に1人が資格や免許を取得していると言えます。
画像引用:30代で未経験の仕事に転職した理由ランキング(Biz Hits)|男女205人アンケート調査|PR TIMES
30代の転職で資格を取るメリット
転職活動時に資格取得をする背景には、さまざまなメリットが存在します。ここでは具体的なメリットを4つ紹介します。
20代の転職希望者に差をつけられる
一般的に30代の転職活動では、企業側から求められるものが20代のときと変わってきます。多くの企業は、即戦力を期待して30代の応募者を中途採用するものです。
そのため、30代の応募者が転職先の業種・職種に関連する資格を取得していると即戦力として期待され、20代の転職希望者にも差をつけられます。また、仕事への熱意や努力する姿勢のアピールにもつながるはずです。
30代こそ転職時には資格を取得して、他の応募者から一歩リードをしましょう。
キャリアをわかりやすくアピールできる
中途採用試験においては、これまでのキャリアや実務経験が判断基準となります。実務経験が面接や履歴書・職務経歴書で伝えられるのと同様に、資格も選考段階からアピールできます。
これまでの実務経験に関する資格を取得しておけば、自分のキャリアを明確にアピールできて、選考時にも有利に働くかもしれません。
未経験の業界への転職時に強みとなる
未経験の業界へ転職する場合、これまでの実務経験ではアピールがしづらいです。そのため、転職先に関連する資格を取得しておくことがおすすめです。
資格を取得しておけば、転職先の仕事内容を理解しやすくなるうえに、未経験の仕事に対する本気度を示せると期待できます。実務経験ではアピールができない分、資格取得でカバーをしましょう。
資格手当で年収がアップする可能性も
業務に直結する資格を持つ従業員に対して、資格手当を支給する会社は多いものです。転職時にはこれまでの役職が下がり、給与がダウンすることもあります。それも、資格手当につながる資格を取得しておけば、転職時の給与ダウンをカバーできるかもしれません。
また、資格はその人の熱意を示すものでもあるため、人事評価でより良い評価を得られる可能性もあります。資格を取得していることで、ゆくゆくは給与の待遇が改善されるかもしれません。
転職活動をする30代におすすめの資格
資格と言っても、IT関連から経理関連まで、幅広い分野の資格があります。ここでは、転職活動時におすすめの4つの資格を、それぞれの特徴や難易度とともに紹介します。
日商簿記検定【難易度:★★★★☆】
「簿記」は企業の経営活動を適切・正確に管理する技能であり、日商簿記検定はこの技能の習得度を測ることを目的としています。
企業の経理事務に必要な会計知識に加えて、財務諸表を読む力、基礎的な経営管理力をアピールできます。また、コスト管理能力や分析力も身につくため、営業職の中途採用でも有利です。
簿記には1・2・3級がありますが、他の転職希望者との差をつけるためには、出題範囲が広い2級をおすすめします。2級の合格率は直近の2021年6月試験で24.0%、過去7回の平均は20%前後です。
勉強時間の目安は全体で200時間程度、一日2時間の勉強を3か月行うイメージです。
URL:簿記 | 商工会議所の検定試験
中小企業診断士【難易度:★★★★★】
「中小企業診断士」は、経営の診断・助言について一定の能力を有する人に与えられる資格です。経営コンサルタントに関わる資格のなかでは、唯一の国家資格です。
経済学、経営戦略、人事、マーケティング、財務・会計、物流、店舗管理、IT、法務など、多くの業界で必要とされるスキルを証明できます。また、経営コンサルタントの資格であるため、コンサルティング会社への転職において有利です。
合格率は、1次試験は17~42%、2次試験は18~19%で推移しています。
勉強時間の目安は全体で800~1,000時間、一日3時間の勉強を1年間行うイメージです。多くの勉強時間を要するうえに合格率が低いため、取得の難易度は高いといえます。
URL:中小企業診断士試験
基本情報技術者試験【難易度:★★★★☆】
「基本情報技術者試験」は、ITエンジニアに求められる基本的な知識を問う試験です。IT関連職の方、またはIT業界で働く予定の方から人気の資格ですが、特別な受験資格はなく、誰でも受けられます。
IT関連の基礎知識だけでなく、企業経営やマネジメント分野の知識も身につくため、多くの業種への転職で役立ちます。
合格率は平均25%前後で、IT業界未経験であれば約200時間の勉強を要します。ある程度の現場経験があれば、50時間程度の勉強時間が合格の目安です。
TOEIC(スコア600)【難易度:★★★★☆】
TOEICは、日常生活やオフィスでの英語によるコミュニケーション能力を測定する試験です。英語を「聞く」力を測定する「リスニングセクション」、「読む」力を測定する「リーディングセクション」の2部構成で、合計10~990点のスコアで評価されます。
TOEIC運営元のIIBCによると、企業が中途採用者(英語を使用する部署)に求めるTOEICのスコアは平均620です。また、企業が社員に期待するスコアは中途社員の場合は560で、600前後のTOEICスコアがあれば、中途採用試験で有利になります。
TOEIC600を超えるためには、200時間程度の勉強が必要です。一日2時間の勉強を3か月継続して行うと良いでしょう。
30代が資格を取得するときの注意点
30代の転職希望者の資格取得は採用試験時に有利になりやすく、 未経験の業界にチャレンジする際にもハンデをカバーできるかもしれません。しかし、資格だけで採用する企業はほとんど存在しないため、実務経験や人間性といったアピールも必要不可欠です。
転職に向けて資格を取得する場合、どのような点に注意したら良いのでしょうか。
実務経験のほうが求められることもある
伸びしろが期待される20代とは異なり、30代の中途採用では「即戦力」が求められます。したがって、保有資格よりも実務経験のほうが重視されるケースも少なくありません。
しかし、未経験の仕事に挑戦する場合、実務経験がアピールにならないことも。その時の打開策として、応募する求人数を増やす、あるいは資格を取得して熱意を示すことをおすすめします。人間性を評価され、将来に期待してもらえるかもしれません。
資格頼みにならない
資格を取得していれば、何でも良いわけではありません。転職先にまったく関係ない、または英検3級のように、中学生でも取得できるような簡単すぎる資格では何の武器にはなりません。
また、人事担当者は「資格の数」ではなく「資格の有用性、難易度」を見て判断するため、取得すべき資格は転職先の職種や職務内容に沿ったものを取得しましょう。
30代の中途採用者には「即戦力」が求められるため、決して資格頼みにならず、過去のキャリアや熱意をしっかりアピールすることも重要です。
面接時には資格の存在をアピールする
どれほど素晴らしい資格を持っていても、面接でアピールをしなければ有利に働きません。面接時には、「資格を取得した理由・経緯」「取得に向けて努力した過程」「入社後の資格の活かし方」をしっかり伝えましょう。
特に、未経験の業種に応募する際は、「仕事に対する熱意」と資格を結び付け、強くアピールするのがおすすめです。
資格の活かし方は転職エージェントに相談しよう
採用試験では資格も重視されるため、転職希望者が資格を取得しておくのは大変有効です。しかし、ただ資格を持っているだけでなく、効果的なアピールが求められます。
年間約12,000件の転職相談をいただいている転職エージェント「ヒューレックス」では、求人紹介はもちろん、書類添削や面接指導も行っています。資格のアピール方法についてもお伝えしていますので、自己PRに自信のない方も効果的な面接・書類対策が可能です。
また、ヒューレックスでは、資格がない、もしくは業界未経験の方でも受け入れてくれる企業の求人を取り揃えています。
転職を考えている、もしくは資格取得を検討している方は、ぜひ一度ヒューレックスにご相談ください。
この記事の監修
神谷 貴宏
愛知県出身。大手証券会社、半導体商社の営業を経て、総合人材サービス会社へ入社。 仙台支店での勤務後、大型派遣案件の企画から運用に従事。その後、会社の中核を担う“正社員”のサポートに携わりたいという思いが強くなり、ヒューレックスの設立に参画する。 17年余りにわたるコンサルタントの経験の中で3,000名を超える方々をサポート。個々人の”キャリア”だけでなく”価値観”を大切にしている。
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