目次
メーカーへの転職は難しいわけではない
「メーカーへの転職は難しい」わけではありません。理由を3つ紹介します。
- メーカーの求人倍率はメディアや商社より高い
- メーカーの求人は増加傾向にある
- 中小メーカーは未経験可で人材を募集している
それぞれ各種データを交えて見ていきましょう。
メーカーの有効求人倍率はメディアや商社より高い
メーカーは転職難易度の高い業界のイメージですが、メディアや商社より有効求人倍率が高いです。有効求人倍率とは、1人の求職者に対して何件の求人があるかを示す指標です。有効求人倍率が2の場合は、1人の求職者に2件の求人があります。
そのため、有効求人倍率が高いメーカーは転職しやすい業界と言えるでしょう。2021年4~8月にかけて転職サイトdodaが行った調査によると、メーカーの求人倍率は平均1.53だったのに対し、メディアは1.39で商社・流通は0.92でした。
業種別の求人倍率一覧表
年月(2021年) | メーカー | 商社・流通 | メディア | サービス |
---|---|---|---|---|
8月 | 1.90 | 0.99 | 1.46 | 2.26 |
7月 | 1.59 | 1.01 | 1.47 | 2.74 |
6月 | 1.37 | 0.90 | 1.28 | 2.32 |
5月 | 1.38 | 0.85 | 1.25 | 2.35 |
4月 | 1.41 | 0.86 | 1.23 | 2.37 |
4~8月の平均 | 1.53 | 0.92 | 1.39 | 2.41 |
メーカーは、メディアや商社と比べると比較的転職難易度が低いことが分かります。
メーカーの求人は増加傾向にある
厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況」によると、2021年度はメーカーの求人が増えました。前年同月と比べると9月の新規求人は32.4%アップで、10月は35.9%アップ、11月は38.0%アップ、と大幅に増加しています。
理由として半導体関連メーカーなどの求人活動が活発化していて求人数も増加しているからです。メーカーの求人数に対し求職者数が少ない状況のため、メーカーへ転職するのに望ましいタイミングと言えます。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年9月分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年10月分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年11月分)について」
中小メーカーは未経験可で人材募集
大手メーカーは募集職種の実務経験者を求めることがほとんどですが、中小メーカーは職種・業種未経験可という企業も多いです。中小メーカーは、大手メーカーと比較すると求職者の応募が集まりにくく、「未経験でも可」としているところもあります。
そもそもメーカーが実務未経験者を採用できる理由は、作業工程がマニュアル化されていることと、30代でも若手扱いになることが挙げられます。メーカーは、品質を一定に保つためSPOという手順書やマニュアル書を用意していることがほとんどです。そのため、未経験者でも仕事を任せやすくなります。
また、メーカーは年功序列の体制が残っている企業も多いです。30代でも若手として扱われるので、実務経験が浅くても伸びしろを期待されます。
メーカーはGDP2割を占める国の基幹産業
メーカーとは、原材料を加工して製造販売する企業のことです。日本貿易振興機構によると、メーカーはGDPの20.5%を占めています。ものづくりニッポンを支える国の基幹産業です。メーカーはこちらの4種類に分けられます。
メーカーの種類
種類 | 事業内容 | 例 | 特徴 |
---|---|---|---|
素材メーカー | 原材料から素材を製造 | 製紙メーカー 化学メーカー |
取引先企業が多く業績は安定している |
部品メーカー | 素材を加工し部品を製造 | 自動車部品メーカー 電子部品メーカー |
BtoBのため知名度は低いが事業規模は大きい |
加工メーカー | 素材や部品を加工し組み立てて製品を完成させる | 自動車メーカー 食品メーカー |
BtoCのため知名度が高い |
総合メーカー | 素材から加工までを自社で担う | 大手化粧品メーカー 医薬品メーカー |
知名度が高く、ブランド力のある企業も多い |
BtoBとは法人が顧客の企業のことです。一般消費者向けの製品を製造するわけではないため、一般的な知名度はそれほど高くありません。しかし、事業規模や売上などの大きい優良企業が多く、転職先として狙い目です。
BtoBの企業は素材メーカーや部品メーカーが多いです。部品メーカーの中には特定の部品が世界シェア1位という企業もあります。
BtoCは一般消費者が顧客の企業です。テレビCMを打つこともあり知名度が高く、就職や転職希望者も多い傾向にあります。BtoCの企業は加工メーカーや総合メーカーが多いです。
メーカーの平均年収は高い
メーカーの人気企業の平均年収を紹介します(参考:Yahoo!ファイナンス)。大手メーカーのため年収は高いですが、中小メーカーを含めたメーカー全体の平均年収は465万円でした。
自動車メーカー大手の平均年収
社名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
トヨタ自動車 | 858万円 | 40歳 |
ホンダ | 798万円 | 44.9歳 |
日産自動車 | 796万円 | 41.6歳 |
メーカーの中核を担う自動車メーカーの大手3社平均年収は800万円前後です。自動車メーカー年収のボリュームゾーンは、600~900万円と言われています。
トヨタ自動車の2017年~2021年にかけての平均年収は852万円で、安定して高収入が見込める企業です。ホンダと日産自動車は、2020年度に従業員の1人当たりの営業利益が落ち込んでも、給料は810万円ほどと高い水準を維持しました。
家電メーカー大手の平均年収
社名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
パナソニック株式会社 | 743万円 | 45.8歳 |
三菱電機株式会社 | 796万円 | 40.7歳 |
シャープ株式会社 | 743万円 | 45.7歳 |
自動車メーカーに次いで存在感のある大手家電メーカーの平均年収も高い傾向にあります。ソニーグループ株式会社はゲーム&ネットワークサービスの営業利益が大きく家電メーカーの枠に収まらないため表に記載していませんが、年収1,040万円です。
大手家電メーカー3社の平均年収を見てみると、三菱電機が頭一つ抜けていますが、それぞれ高年収であると言えるでしょう。
食品メーカー大手の平均年収
社名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
味の素株式会社 | 997万円 | 44.1歳 |
サントリー食品 インターナショナル株式会社 |
1,180万円 | 41.3歳 |
キリンホールディングス株式会社 | 873万円 | 42.6歳 |
食品は生活に欠かせないもののため、安定した業績を維持しやすい業種です。20、30代のうちは平均年収がそれほど高くなくても、40代になると大幅に年収アップすることも多いです。
サントリー食品インターナショナルを始め、食品メーカー大手は年収800万円以上もらえる企業が多いです。
化粧品メーカー大手の平均年収
社名 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
花王株式会社 | 823万円 | 40.5歳 |
株式会社コーセー | 818万円 | 41.7歳 |
株式会社資生堂 | 658万円 | 38.8歳 |
大手化粧品メーカーの年収は高いです。しかし、リーズナブルな化粧品が増えていることもあり、化粧品メーカー全体としての平均年収はあまり高くありません。化粧品メーカー全体の平均年収は424万円で、メーカーの中で1番低いという調査結果もあります(参考:メーカー 化粧品|マイナビAGENT)
花王とコーセーより資生堂の年収は約150万円安いですが、資生堂のみ平均年齢が30代です。
メーカーは企業と職種によって年収に差がある
メーカーは企業によって年収が大きく異なります。規模の大きい大企業から町工場のような小さいところまであるからです。また、総合職と一般職、現業職(現場で生産に携わる社員)の給料にも差が見られます。
そのためメーカーの年収を調べる時は、知りたい職種の年齢別の年収を確認しましょう。年齢別で確認する理由は、メーカーは歴史の長い企業が多く年功序列の傾向が強いためです。年齢別年収の調べ方は、口コミやOB訪問、転職エージェント担当者に確認する方法があります。
メーカーの転職で求められるスキル
メーカーの転職で求められる3つのスキルについて解説します。
- 大手メーカーは同じ職種の実務経験
- 中小メーカーなら応募職種に近い業務経験
- 調整力とコミュニケーション能力
1つずつ詳しく紹介します。
大手メーカーは同じ職種の実務経験
大手メーカーに転職する場合は、同じ職種の実務経験が求められます。実務経験者は即戦力になるうえ、未経験者より早期離職するリスクが低い傾向にあるからです。実務経験者は似たような業務経験があるのでイチから仕事を教える手間がかかりません。「思っていた仕事と違った」とすぐに辞める可能性も未経験者より低いです。
実務経験として、営業職ならメーカーか商社での営業職経験が求められることも多いです。海外に販路のある企業の場合は、輸出入の経験があれば喜ばれます。生産技術開発なら「生産ラインの立ち上げ経験」「操作や保全の経験」などの経験やスキルがあれば歓迎されることも多いです。
中小メーカーも経験者を欲しいと考えているため、転職市場において経験者は有利です。一方で大手メーカーは、応募人数が多いことから競争倍率も高いため「実務経験がある」という強みは必要になります。
中小メーカーなら応募職種に近い業務経験
中小メーカーは同職種未経験でも採用されるケースがあります。ただし、応募職種に似た業務経験のある方が望ましいです。
法人を顧客とした営業職の場合は、法人営業の経験がなくても顧客対応や顧客折衝の経験があれば応募資格を満たしていることがあります。営業職は人柄で契約が受注できるケースもあるため、人柄を重視することが多いからです。
中小メーカーは応募する職種の業務内容に近い経験をしていないか、スキルの棚卸しをしましょう。
調整力とコミュニケーション能力
メーカーに転職する際に必要になるヒューマンスキルは「調整力とコミュニケーション能力」です。メーカーは、国内外を問わずさまざまな担当者とやり取りする機会が多いからです。
例えばコンサル型営業の場合、顧客のニーズに適切に対応するために各部門と連携して業務を進めます。「海外の工場でこの商品が欲しい」と言われた場合は、輸出できるかの確認から関税への対応、自社の利益の確保など関係部署と相談して進めて行かなくてはいけません。
そのため、メーカーは調整力とコミュニケーション能力の高い人材を必要としていることが多いです。英語力があれば、より歓迎されます。
メーカーで働くメリットとデメリット
メーカーは新卒の学生からも人気の業界です。メーカーで働くメリットとデメリットについて紹介します。
メリットは福利厚生の良さ
メーカーで働くメリットは福利厚生が良いところです。メーカーは土日休みが多く残業が少ない傾向にあります。さらに各種休暇が多く、育児休暇や介護休暇はもちろんのこと、転勤休暇や生理休暇などを用意している企業もあります。しっかり休める労働環境のため、残業もあまりありません。
企業によっては「残業させない」「休みを取らせる」よう積極的に取り組んでいるため、休まなくてはいけないことにプレッシャーを感じる社員もいるようです。
しかし、しっかり休めて福利厚生の充実しているメーカーで働くとプライベートが充実します。福利厚生の良さはメーカーで働く大きなメリットです。
デメリットは転勤が多い企業もあること
メーカーのデメリットは転勤が多いことです。全国や海外に多数の支社や工場を持っている大手メーカーは数年ごとの転勤も珍しくありません。ただし、中小メーカーは転勤のない企業も多いです。
転勤がある理由は、地域によって人員の確保が難しかったり、1人の社員に様々な地域で働いてもらうことで新規顧客開拓につながったりするためです。技術職の場合は、新しく工場や生産ラインが立ち上げられた際に転勤が命じられることもあります。
また、トラブルが発生した時に、似たようなトラブルの対応経験がある社員を呼び寄せることもあります。ただ、転勤があることで、職場の閉塞感が緩和したり、苦手な上司と離れられたりするというメリットもあります。
全国に事業所を持つ大手メーカーの場合は、転勤があります。どうしても転勤したくない方は、地域に根差した転職エージェントに転職無しのメーカーの求人を紹介してもらいましょう。
メーカー転職の面接対策
メーカーに転職する際の面接対策について解説します。意識しておきたいポイントは3つです。
- 深堀した質問に答えられるようにしておく
- 他社研究をして志望動機を明確にする
- 中長期的経営計画を把握しておく
順に確認していきます。
深堀りした質問に答えられるようにしておく
メーカーは営業職として採用する人材にコミュニケーション能力を求める傾向があります。コミュニケーション能力は面接時の受け答えで測りやすいため、1つの返答を掘り下げて聞いてくる可能性が高いです。
「今までの仕事で得た最大の成果は何ですか」という質問をされそうな場合、以下の内容についても答えられるようにしておきましょう。
- 何人のメンバーと仕事を進めたか
- どのようにして成果を出したのか
- 成果を上げるまでに大変だったことは何か
- 大変だったことはどうやって乗り越えたか
- 乗り越えた時はどのように感じたか
質疑応答を重ねても答えられるように、自己分析をしておくことをおすすめします。
他社研究をして志望動機を明確にする
志望動機を明確にするために、応募企業と同業他社の違いについて研究しましょう。他社研究をすると、応募企業ならでは特徴が志望動機に盛り込みやすくなるからです。他社研究をする際は、商品やサービス、対象顧客などについて調べるようにします。競合他社との違いを知ると応募企業がどの分野に力を入れているかも把握しやすくなります。
他社研究を通じて、入社意欲の高さをアピールするように心がけましょう。
中長期的経営計画を把握しておく
メーカーは創業100年など歴史の長い企業が多い業界です。創業100周年、80周年など節目の時にスローガンを掲げて経営計画を発表していることがあります。これらの情報をおさえたうえで、面接対策することをおすすめします。
例えば、2020年に創業100年を迎えたリンナイ株式会社やマツダ株式会社は次の100年に向けての取り組みを発表しています。経営のトップが事業戦略について語っているので、どのような理念のある企業なのかについて把握しやすくなります。
応募企業のスローガンや中長期的な経営計画をふまえて、自己分析をしましょう。
メーカーに転職してキャリアアップを図ろう
メーカーへの転職は決して難しいわけではありません。大手企業では実務経験が求められることも多いですが、中小メーカーなら応募職種に似た業務経験があれば採用されることも多いです。
大手メーカーの年収は高く、福利厚生も充実しています。ただし、大手メーカーは転勤があります。「住んでいる地域で働けるメーカーに転職したい」「実務未経験でもメーカーで働きたい」方は、転職エージェントのヒューレックスにご相談ください。
ヒューレックスは、地域に根差したメーカーの求人を数多く保有しています。預かっている求人は「人物重視」という中小企業のメーカーが、登録者一人ひとりの人柄が活かせる仕事をご紹介いたします。
この記事の監修
須賀川 敏哉
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、大手証券会社に入社。人材業界では、通算20年以上のキャリア。10年間の証券営業を通じ、経済や景気動向、企業動向の見方を養う。 大手総合人材サービス会社では、首都圏拠点立ち上げ、新宿・丸の内支店長、金融・外資部長、東京本社エリアディレクターを歴任。 ヒューレックスでは、転職支援を中心に、コンサルタントとして幅広い職種と年齢層に対応。
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