【インタビュー】人口減少が深刻化する秋田を、観光地域づくりで盛り上げる!
記事掲載日:2020/11/27 取材日:2020/10/19
2016年に発足した「一般社団法人 秋田犬ツーリズム」は、地域の稼ぐ力を引き出し観光地経営の視点で観光地域づくりの舵取りをする法人(DMO)です。同法人への転職に成功した、大須賀 信様との出会いは、2017年7月。現在、大須賀様は海外事業所立ち上げのご経験を活かし、DMOの事務局長として秋田県北部へ訪日客誘致のための戦略的マーケティング全般を担われています。
今回、大須賀様のこれまでのキャリアの軌跡と、転職の体験談、現在のご活躍などのお話を伺いました。大須賀様にあらためてご相談当時のことを振り返っていただきながら、転職成功のポイントを探ります。
一般社団法人 秋田犬ツーリズム 事務局長
大須賀 信 様
大学卒業後、外資系航空会社に入社。その後、システム会社の中国事務所で管理部長を経験。設備建設会社で海外事業所の設立、事業立ち上げに携わる。2018年から現職。
一般社団法人 秋田犬ツーリズム
https://visitakita.com/
秋田県北部4市町村よりなるDMO(観光地経営組織)として、海外で地名度の高い秋田犬をフックに地域の観光や物産販促の活性化に取り組む。YouTube動画制作やSNS投稿、訪日客向けのイベント開催など、積極的な情報発信や受け入れ態勢の整備を行っている。
魅力に感じていた東北で、人生をかけてやりたい仕事に出会えた
まずは、これまでのご経歴とキャリアの軸を教えてください
- 大須賀様
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大学卒業後は外資系航空会社に入社し、首都圏で空港運営を担当していました。次第に他の業務にも携わりたいと考え、システム会社に転職。そこでは海外子会社の管理運営に現地駐在で携わりました。その後、設備建設会社の経営企画職として、現地法人の経営管理・新規法人の立ち上げに従事しました。海外法人設立におけるマーケティングから事業計画策定、各種手続き推進、組織運営といった一連の業務を単独で推進してきました。
このように海外の業務を軸にキャリアを積んできたなかで思うのは、都市か地方か関係なく語学ができれば仕事のチャンスが広がるということです。外国語が必要な業務で、外国人スタッフを雇う方法も一つですが、彼らはネイティブではないためどうしても言い間違いやわからない語感やニュアンスがあります。そのため外国人スタッフが訳した言葉をチェックできる、語学が堪能な日本人スタッフが必要になるのです。
実際に、とあるイベントで中国語翻訳者が最寄駅の説明の際に秋田県の地名である「角館駅」を「秋田駅」に言い間違えてしまいました。たまたま私が中国語を理解していたためにその間違いを指摘できましたが、そうでなければ間違った情報に気づけないまま情報発信してしまうリスクがあるのです。ですから語学を習得しておくことは、どこにいても必須のビジネススキルになると思っています。
ご転職のきっかけは何でしたか
- 大須賀様
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もともと仲の良い大学の先輩が岩手県の西和賀町にいて北東北には何回か遊びに来ていました。それで東北の魅力に惹かれ、東北にはどのような仕事があるのだろうと思いヒューレックスに相談したことがきっかけです。
特別、前職の仕事に不満があったのではなく「もし良い仕事があったら東北も良いかもしれない」といった軽い気持ちでした。とはいえ、40代での転職で良い求人があるのか不安だったように思います。
その後も転職先を熱心に探してはいなかったのですが、ヒューレックスに相談したことを忘れていた頃に、コンサルタントの大西さんから電話が入りました。当時は首都圏に住んでいたため、突然仙台の市外局番から着信があり驚きました。誰からの電話かわからないまま、慌てて仕事を抜け出し電話に出た記憶があります。
その電話で、秋田犬ツーリズムを紹介していただきました。予想外のジャンルに最初は驚いたものの、秋田犬ツーリズムの取り組みを知るうちに、残りのサラリーマン人生の後半をかけて一生懸命やりたい仕事だと強く思いました。人口減少・高齢化の問題を「地方創生」で解決できる。はじめて地方創生を正面から取り組むという新たなチャレンジでしたが、これまで培った能力と経験が少しでも地域に役立てられればという想いでした。
そもそも、当時、私はDMOという仕組み自体を知りませんでした。加えて秋田犬ツーリズムの拠点のある大館市も、今でこそ記憶を辿れば大学の先輩との旅行で訪れたことはありましたが、場所もよくわかりませんでした。そのような中で秋田に移住してきたからでしょうか。秋田の方から「よく来てくれたね」「大変じゃない?」と温かい声をかけていただくことがあります。私としては大変だと思ったことは一度もなく、とても楽しくやっています。大館市は地方の小さな都市ではありますが、生活に必要最低限の店が集約されていますし、今の生活がとても気に入っています。
人口減少・高齢化が深刻化する秋田の魅力を海外にまで伝える
秋田犬ツーリズム様に興味を持たれたのはどのような部分ですか
- 大須賀様
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日本版DMOの始まりは、数年前に遡ります。新しい組織の在り方で前例がないにも拘わらず、秋田犬ツーリズムは「だからこそ自由にトライしてみよう」という気風がありました。地方の秋田県では珍しいことではないかと思います。自ら企画し、意思決定、そして実行できる環境です。このような姿勢が徹底されており、嫌々仕事をしている人は一人もいません。秋田犬ツーリズムは、それぞれの役割をもって地方創生に役立っていることを肌で感じることができます。
秋田の特産品ネット通販サイト「こだわりAKITAセレクトショップ」は、実は会計の女性が運営しています。ネット通販サイトの利用者は女性が多いこと、そしてお金の流れがわかることから、彼女を担当に抜擢しました。彼女自身、会計以外の仕事に携わることが自信につながり非常にやりがいを感じてくれています。このように前向きに楽しく仕事に取り組むメンバーが揃っていることが、秋田犬ツーリズムの魅力の一つですね。
ご入社されて2年半ほど経ちました。現在の業務内容を教えていただけますか
- 大須賀様
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現在は事務局長として、プロモーションの立案や、内部の組織運営、申請手続き、取材対応などの業務を担っています。秋田犬ツーリズムは合計9名のメンバーで構成され、「観光」「物産」「会計・EC」の分野で担当が分かれています。うち2名が外国人スタッフです。
観光分野では、特に海外向け業務が多く、非常に良い反響をいただいています。2020年10月に秋田犬ツーリズムが主催した台湾・台北とのオンライン農泊体験イベントも大盛況でした。台湾と大館市2カ所、北秋田市1ヶ所をつなぎ、Facebookでライブ配信しました。北秋田市名物のバター餅やきりたんぽづくり体験、特産品の景品抽選など様々なコンテンツをパブリックビューイングで配信した結果、再生回数が4,000近く、シェア200近く、コメント900以上、リーチ12,000人にも及びました。さらに台湾の方々からもたくさんの質問をいただきました。コンテンツをきちんと伝えていけば、世界の方々に喜んでいただける手ごたえをあらためて感じることができた出来事の一つです。秋田犬ツーリズムのプロモーションでは、デジタル・オンラインを活用した積極的な配信を心がけています。その成果として、秋田県北部の外国人宿泊者数は、5年間で2倍以上に増えています。
民間企業では味わえない、社会から評価されるやりがいがある
ご入社してどのような変化がありましたか
- 大須賀様
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民間企業では、営利を追求し、「組織の運営」を考えることが仕事でした。一方でDMOでは「地域全体を経営する」ことが仕事になります。以前のキャリアで培った語学や組織をまとめるスキルは現在の仕事に役立っている部分も多いですが、全く異なるキャリアです。地域の人と直接対話し、合意をとるためにあちこち出向くことも多々あります。
加えて、秋田県北部は従来、観光開発がされていなかったエリアです。したがって秋田犬ツーリズムが取り組んだ分だけ、すべてが形になります。白地のキャンパスに構図を描き、色を塗り、一つの大きな絵を完成させるような仕事です。日々の一つ一つの仕事に意義を感じることができ、楽しく仕事をさせていただいています。
現在の職場でやりがいに感じることは何ですか
- 大須賀様
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民間企業にいると、その企業内でしか評価されない場合が多いですが、DMOでは地域社会ひいては国から評価されます。
秋田犬ツーリズムは第6回ジャパン・ツーリズム・アワードで、「DMO推進賞」を受賞し、さらには全国200件のDMOの中から32件が該当する「重点支援DMO」に選ばれています。規模の大きいDMOであれば100~200人規模の職員がいる中で、私たちはたった9人の組織ですから、とても誇らしいことだと思います。
また、私が発案者となって秋田犬ツーリズムと隣接しているDMOとの連携に注力しています。互いの取り組みをリアルタイムに共有することで、新しい気づきと良い刺激を得られるようになりました。隣接しているDMOでは、やはり土地柄的に同じような問題を抱えています。だからこそ、互いの取り組みがとても勉強になるのです。今では、他の地域のDMO職員と顔見知りになり、県境、自治体の枠を越えて、皆で協力し合っています。DMO同士で横のつながりが少ないエリアも少なくありません。ですから、DMO連携に関しては日本全国で一番進んでいるのではないかと自負しています。
今後の目標を教えてください
- 大須賀様
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秋田県北部は全国でも一番最初に少子高齢化が深刻化し、さらに高齢化が進んでいる日本社会の縮図といえます。このようなエリアで先進的なDMOとして評価されることによって、同じような問題を抱えている地域を勇気づけられると考えています。
秋田北部でも人口減少・高齢化問題を克服したのなら私たちもできるかもしれないーー。そのように思ってもらえるようなロールモデルになりたいです。秋田県北部の成功事例は、日本全体にも応用できるでしょう。
世界に目を向けると、アジアでも人口減少・高齢化は進んでいます。そのような状況下で、海外からも「日本の”秋田”で成功事例がある」と言ってもらいたいですね。日本は他国よりも少子高齢化が進んでいる国です。日本の有名な観光地からではなく、地方にある秋田犬ツーリズムが日本の代表的なDMOになることに意義があると強く思っています。いつかDMOの先輩格である欧米から「地方創生に成功しているモデル」と認識され、秋田県北部に視察に来てもらえるような先進的な取り組みを今後もさらに増やしていきたいです。
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